ICタグの具体的な利用イメージをベンダーが提案し始めた。関連ベンダーは、スーパーの店舗におけるICタグの活用を想定したショッピング・カートや、手首に着けて使うICタグの読み取り装置(リーダー)を試作。ICタグのデータを携帯型ゲーム機で管理する安価なシステムも登場した。
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写真1●ICタグ対応のショッピング・カートは、凸版印刷が開発したもの(左)と、大日本印刷が開発したもの(右)が出展された |
ICタグの使い方をベンダーがより具体的に提案し始めたことも、市場の拡大にとって好材料だ。同日から開催されたAIM主催の「自動認識総合展」では、ICタグ関連ベンダーが最新製品を一斉に披露した。
凸版印刷と大日本印刷はそれぞれ、ICタグを適用したスーパー向けのショッピング・カートを公開した。凸版印刷のカートは、カゴを納める枠にリーダーのアンテナを内蔵し、取っ手の部分に液晶ディスプレイも設置してある(写真1左[拡大表示])。顧客がICタグ付きの商品をカゴに入れると、商品の価格や説明がディスプレイに表示される。
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写真2●建設用のレンタル資材にICタグを取り付けた |
大日本印刷が出品したシステムは、逆にカートにICタグを取り付けた。商品棚の側面にリーダーのアンテナを設置し、カートが棚に近づくとリーダーがICタグを読み取る(同右)。そのカートに向けて、店内のサーバーから無線LANで、周辺の棚にある特売商品などの情報を送信する。「将来は、自宅の冷蔵庫にある食材と買い得商品の情報を確認しながら、献立を考えるといった使い方も可能になる」(ICタグ事業化センターの井上治氏)という。
「ウェアラブル」なリーダーが誕生
これまでに見られなかった適用分野や、作業現場の実状に則したICタグ関連製品も出てきた。
ICタグ・ベンダーの日本アールエフソリューションはシャープシステムプロダクトと共同で、建設資材のレンタル業者向けにICタグを応用した製品を披露した。建設中の建物周辺を覆う防護用ネットに1個100円程度のICタグを縫いつけたり、高所作業中の落下を防ぐための器具にICタグを内蔵したものである(写真2[拡大表示])。
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写真3●ウェルキャットが試作したウェアラブル型のICタグ・リーダー |
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写真4●バンダイの携帯型ゲーム機「ワンダースワン」を利用したICタグ・リーダーも出展された |
物流センターや倉庫での実際の利用局面で便利そうなリーダーも登場した。腕時計のようにベルトで手首に巻き付けて使うリーダーである(写真3)。本体部分の大きさは縦51×横82×厚さ21mm。重さは95g。物流業務向けのシステム開発を手掛けるウェルキャットが出品した。
商品を分類・保管したり運ぶために使うトレイの側面に、ICタグを取り付けておく。物流センターの運搬担当者などがトレイを両手で持ち上げた時、手首に着けたリーダーが自然とICタグに近づいてコードを読み取る仕組みだ。リーダーにはBluetoothの通信機能が内蔵してあり、読み取ったICタグのコードをリアルタイムでパソコンや携帯情報端末(PDA)に送信できる。
既存のハンディ型リーダーは、手で持って意識的にICタグのコードを読む必要がある。これに比べると、「物流センターの検品作業などに新型のリーダーを使った場合の作業効率は2倍に向上する」(同社)という。発売時期は未定だが、1台当たり10数万円になる見通しである。
安価なシステム開発が可能に
ICタグを利用したシステム開発を手がける先端情報工学研究所は、バンダイの携帯型ゲーム機「ワンダースワン」を使った「RFタグ棚卸セット」を発表した(写真4)。リーダーで読み取ったICタグのコードをいったんワンダースワンに格納し、後でパソコンなどにケーブルで転送する。ICタグのコードを管理するための端末としてパソコンやPDAを使うシステムは多いが、ゲーム機を使う例は珍しい。
同社はワンダースワンを採用した理由として、「PDAより圧倒的に価格が安い」ことを挙げる。PDAは数万円するのに対し、ワンダースワンは7800円で「壊れたときも気軽に買い替えられる」(同)。パソコン上でワンダースワン用のアプリケーションをC言語で開発できるツール(バンダイが販売、1万6800円)が存在することも、開発期間の短縮とコストダウンにつながるという。