三井住友銀行とUFJ銀行が来年をメドに共同開発する口座振替システムの詳細が判明した。レガシーなバッチ・システムの代表格である口座振替システムをJavaで全面再構築、地銀への外販も見据える。狙いは投資効率の向上。過去の常識を覆す異例尽くしの取り組みが始まる。

 「口座振替のような社会インフラに近いシステムは、競争よりも合理化が重要。投資効率の向上を目指した判断だ」。三井住友銀行システム企画部の井上宗武副部長は、UFJ銀行との共同開発に至った理由をこう説明する。口座振替システムは、電気会社や通信会社などから受け取った口座振替の依頼データを変換・整備して、勘定系システムに渡す役目を担う。

 大手銀がシステムを共同で開発すること自体、従来の常識では考えられない大胆な決断といえる。その結果、開発費用を従来より大幅に減らせると両行はみる。「互いのシステムの良いところを持ち寄り、さらにすぐれたシステムを作れる」(UFJ銀システム企画部の丸山明次長)メリットもある。

図●三井住友銀行とUFJ銀行が共同開発する口座振替システムの概要

 より驚くべきは、アプリケーションをJavaで全面再構築することだ([拡大表示])。口座振替システムは巨大バッチ・システムの典型である。ピーク日の毎月28日における処理件数は、三井住友銀で1100万件、UFJ銀で1000万件に達する。これほど巨大なバッチ処理をこなすシステムをJavaで構築するのは、大手銀のなかでも今回が初めて。

 現在、口座振替の処理はメインフレームで行うのが“常識”だ。しかし、両行の口座振替システムは稼働から30年近くが経過し、取引先は数万社に増えた。取引先が持ち込む依頼データの形式は企業によって異なる場合があり、結果的にシステムの複雑化・肥大化が進んでいた。

 両行は、新システムを設計から全面的に見直す。例えば、取引先から依頼データを受け取ったらその都度処理をすることで、処理の負荷をできるだけ分散させる。処理途中のデータの中身を確認できる機能も用意、メンテナンス性を高める。さらにサーバー向けJava仕様「J2EE」に完全準拠して、低価格のオープン系ハードウエアやOSを利用可能にする。

 新システムの開発は、三井住友銀のシステム開発を受け持つ日本総合研究所と、UFJ銀の勘定系を手がけるUFJ日立システムズが協力して進める。両行で処理が異なる部分は、それぞれ独自に追加で開発する。

 プロジェクトはまず、来年9月に先行稼働するUFJ銀向けシステムの開発作業を最優先に位置付け、年内をメドに共同開発を進める。その後UFJ銀は来年初めから勘定系との接続テストなどに取りかかり、来年9月に旧システムとの並行稼働を開始。2005年1月の完全移行を目指す。UFJ銀は口座振替システムの再構築で11億円程度の費用を見込む。このうち共同開発するアプリケーションの費用は約6億円とみられる。共同開発費は両行で折半する。

 一方の三井住友銀は、共同開発が完了した来年1月から、口座振替システムのパッケージ化を本格化。日本総研のビジネスとして、地銀への外販に臨む。三井住友銀が新システムを利用する時期は未定である。

(大和田 尚孝)