真の狙いは“なれ合い”の排除

写真2●平井卓也衆議院議員
自民党政務調査会e-Japan重点計画特命委員会におけるレガシー・システム改革指針の策定担当主査

 NTTデータのデータ通信サービスは、「顧客の負担を平準化する仕組み。アウトソーシングやPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の先駆けだ」と、NTTデータで公共部門を統括する中村直司常務取締役は合理性を説明する。

 これに対し、特命委員会でレガシー・システム改革指針を主査としてまとめた平井卓也衆議院議員(写真2)は「以前は存在意義のあるサービスだったかもしれない。しかし現在は、契約を解除できない、システムの構成や価格が適正かどうかを判定しにくくなっている、という二つの点で問題だ」と指摘する。

 さらに平井氏は、「NTTデータの契約だけを問題にしたかったわけではない。官庁と国内大手ベンダーの関係にメスを入れたかった」という。「競争がない環境でシステムを調達し、第三者によるシステム監査も行われない状況が続いては、官庁とベンダーの間に“なれ合い”が生じやすい。その結果、低コスト化が可能な新技術の導入が進みにくくなるといった問題が出ることを指摘したかった」と真意を語る。

“残債”があるから逃げられない

 しかし、改革の道のりは平坦ではない。特許庁は現在、ソフトの著作権を保持しておらず、新たなシステム改修を競争入札にかけられない。NTTデータに“残債(NTTデータに支払わねばならない残りの金額)”を支払い終えたときに、ソフトの著作権が特許庁に移転するという契約を結んでいるからだ。

 ところが、データ通信サービスにかかわる残債が膨れ上がり、支払い終了のメドが立っていない。2003年3月末時点の残債は277億円。「当庁の2002年度のIT予算は全部で280億円。短期間で支払える金額ではない。できるだけ早く支払いを終えられるように財務省と調整していく」と若井総括班長は打ち明ける。社会保険庁でも同様の問題があり、「1900億円の残債があるが支払い終了時期のメドは立っていない」(平井氏)という。

国内大手は“お手並み拝見”の構え

 見直しの対象になるレガシー・システムを数多く提供している国内大手ベンダーは、「コスト削減、利便性向上を目指す今回の政府の方針は、的を射たもの」(NEC、NTTデータ、日立製作所、富士通)と口をそろえる。

 ただし、「長年、官庁の業務に関するノウハウを培ってきたのは大きな強みであり、最適なシステムを提案できる」(NEC、富士通)という強気の姿勢も崩さない。NTTデータの中村常務は、「随意契約が続いてきたのは、当社が官庁業務を深く理解しているからだ。政府の大規模システムはいずれも国民サービスに直結する重要なものばかり。新参のベンダーが請け負い失敗しました、ではすまされない」と言う。

 丸投げ体質の官庁が、システム担当者の能力向上を図ってこなかったためにベンダーへ依存せざるを得なくなったのは確かである。依存するベンダーが替わっても“なれ合い”は変わらない、という愚挙は避けねばならない。

(広岡 延隆)