3月11日、国内企業が中心になってICタグの標準化団体「ユビキタスIDセンター」を発足させた。既存のコード体系を生かせる、オフラインでも使えるといった特徴を武器に、欧米企業中心の「オートIDセンター」を急追する。ただし実現できるアプリケーションは、現時点では両者の間であまり差がない。

写真●東京大学の坂村健教授
 多くの企業が今最も高い関心を寄せている「ICタグ」。ユビキタスIDセンターの登場で、ICタグを巡るデファクト争いは一段と熱を帯びてきた。

 ICタグとは、ごま粒大のICチップと無線通信用のアンテナからなる超小型装置のこと。ICタグを商品一つひとつに装着すれば、文字通り「単品管理」を実現できる。欠品防止や品質保証による顧客満足度の向上に加え、商品の入出荷に伴う検品作業の効率化や商品の盗難防止など、ICタグを利用することで得られる効果は計り知れない。

 ユビキタスIDセンターの狙いは、ICタグを業務アプリケーションのなかで活用するための標準規格を策定すること。商品情報をICタグに格納する際のコード体系や、ICタグのコードを読み取る装置について標準化を進める。3月11日時点で、キヤノンやシャープ、凸版印刷、NEC、NTTなどユーザー企業とITベンダーを合わせて50社が参加している。

 4月からは、内容は未定だがICタグを活用したアプリケーションの実験を開始。11月までに問題点を解決し、12月をメドに実運用を始める。実証実験と並行して、海外でも標準規格の普及活動を展開する。同センターを率いる東京大学の坂村健教授(写真)は、「12月までに米国、欧州、韓国、中国、シンガポールに研究開発拠点をつくる」と語る。

(栗原 雅)

次回(下)へ続く