日本ヒューレット・パッカードが1月、2月とたて続けに発表したパソコン・サーバーの値下げは業界を驚かせた。インパクトがあったのは、絶対的な価格よりも値下げの頻度。3週間で値下げしたマシンさえあった。顧客のコスト意識の高まりを背景に、サーバーの価格もデフレ・スパイラルに突入したようだ。

 日本ヒューレット・パッカード(以下HP)は1月8日に本体45モデル、オプション(プロセサ、メモリー、ハード・ディスク)55製品の値下げを発表。続いて1月22日には、1月8日の値づけを反映した11の新モデルを追加した。2月12日には本体34モデル、オプション21製品を再度値下げした。2月12日の値下げには1月22日に追加したモデルも含まれており、それらはわずか3週間で値下げしたことになる。

 インダストリー スタンダード サーバ統括本部の上原宏ビジネス プランニング本部長は「1月に平均20%、2月に5~10%の値下げをした。HPとコンパックの2社が合併して開発、製造、流通を一本化してコストを下げたのはもちろんだが、それ以上に、利益を若干犠牲にしても価格競争力を高めることを重視した」と語る。「値下げと広告が効果を発揮して、顧客からの引き合いは従来に比べて3割増のペース。品不足の商品も出てきているほどだ」(同)。

 しかし、値下げ後の価格設定に大きなインパクトがあるかというと、それは少し疑問である。

表1●日本ヒューレット・パッカードのラインアップから3製品を選び、他社の似た製品と並べてみた

 表1[拡大表示]はHPのラインアップから3モデルを選び、他社の似た構成のモデルと並べたものだ。デスクトップ・パソコンでよく使われるPentium 4を積んだエントリ・モデルでは、HPの「ProLiant ML310」の14万8000円という価格は、NECの「Express5800/110Eg」の2モデルの中間に位置する。CPUが中間の速度なので、同レベルの価格設定といえる。マルチプロセサ構成が可能なXeon搭載モデルでは、HPとNECのタワー型はほぼ同等、ラック型ではHPに少し買い得感がある。

 直販を中心とするデルコンピュータと比べると、エントリ・モデルとXeonタワー型ではデルの勝ち。Xeon搭載のラック型では互角の勝負というところ。日本IBMの製品は同社のWebサイトで販売するモデルである。エントリ・モデルではIBMにお買い得感がある。Xeon製品では、IBMの構成にディスク・アレイが入っているため比較が難しい。

 競合他社に聞いてみた評価は、今回の値下げで、HPがようやく同じ土俵に乗ってきたというものだ。「うちには10万円を切る110Gaのような製品もある。機能や品質だけでなく、価格でも負けない」(NECソリューションズの乙黒(おとぐろ)孝夫クライアント・サーバ推進本部長)。

「HPの価格は最小構成だとうちの価格に近付いてきたが、周辺機器を加えて組み上げたら当社が安い。まだ並んではいない」(デルの辻智明エンタプライズ・システム・マーケティング本部PowerEdgeプライシング・マネジャ)。「外資系メーカーとの競争は十分意識している。サポート期間などの詳細を勘案してもらえば、当社の価格は競争力がある」(日立製作所インターネットプラットフォーム事業部販売推進本部規格部の清水道明販売計画担当部長)。いずれのコメントも、どことなく余裕が感じられる。

合併で失ったシェアを取り返す

 競合メーカーからは、「合併によってHPはシェアを下げた。値下げで巻き返そうというだけのこと」という意見が聞かれた。HPもそれを否定しない。

 上原本部長は「好調時のシェアはコンパックが18%、HPが9%くらいで、合わせて27%だ。合併前の買い控えがピークに達した昨年夏はシェアが大きく低下し、合わせて14%くらいになってしまった」と話す。

 その原因は値下げが後手に回ったことだ。サーバーの部材のなかでは米インテルから供給を受けるプロセサやメモリーなどが大きなコストを占め、サーバー・メーカーは部品の価格低下に合わせて値下げをする。「去年は、値下げ要因が多くなったらやろう、と思っていたら後手に回った。こまめに値下げをするというのが今年の戦略だ」(上原本部長)。