中堅物流会社であるエスビーエスは、Webサービスを使った新しい物流管理システムを構築中だ。57種類ものアプリケーション機能をWebサービスで用意。これにより顧客企業に在庫情報を提供したり、顧客企業から出荷指示を受け付ける。機能の大部分をWebサービスにしたシステムは珍しい。

図●エスビーエスが現在開発中のWebサービスを採用した物流管理システムの概要
物流管理システムのアプリケーション開発は2003年1月末までに完了させる予定
 エスビーエス(SBS)は2003年半ばをメドに、Webサービスを使った新物流管理システムを本格稼働させる。アプリケーション開発は2003年1月末までに完了させる。開発費用は約3000万円とみられる。開発作業の終了後、顧客企業である通信販売会社のシステムと接続する。

 新システムで接続の対象となるのは、通信販売会社が管理する在庫管理システムとその会社の営業拠点にあるパソコンだ。さらに、通信販売会社の在庫管理を担当するSBSの物流拠点にあるパソコンからも利用できる([拡大表示])。接続が完了すると通信販売会社は、社内システムやパソコンからSBSに対し、出荷指示や在庫確認などができるようになる。

 SBSは、同社が提供する3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)サービスの利用企業に向けて新システムを開発した。3PLとは、顧客企業から物流業務を一括して請け負う事業のこと。今回最初に接続する通信販売会社は、SBSの3PLサービスを利用している。

 SBSの舘林信(まこと)取締役は、「Webサービスを利用し、顧客企業に向けてリアルタイムに情報を提供することで、当社が提供する3PLサービスの品質を飛躍的に向上できる」と期待を寄せる。このほか、Webサービスを使うことで、SBSの新システムと顧客企業のシステムとの連携作業も軽減できるとみる。SBSのシステム関連会社で、新システムの開発を担当しているシーエスネットの西田富彦 代表取締役は、「Webサービスの通信プロトコルであるSOAPといった標準技術の採用により、従来の4分の1程度に当たる1人月くらいに工数を抑えることができる」と見込む。

 新システムが備える57種類のWebサービスには、在庫管理、入出荷管理、マスター管理などがある。「最も分かりやすい単位であるアプリケーションの処理機能ごとに、Webサービスを作成することにした」と、西田代表取締役は説明する。例えば出荷管理機能では、「データの登録」、「Excelなどで作成した多数の指示データを一括登録」、「出荷状況の照会」、「返品状況の照会」といったWebサービスを用意する。

 シーエスネットの開発担当者はまずJDK(Java開発キット)で、アプリケーション機能を提供するJavaクラスを作成し、変換ツールを使ってWebサービスにする。この変換には日本アイオナテクノロジーズのWebサービス作成用ツール「XMLBus」を使う。新システムの実行環境にはアイオナのWebアプリケーション・サーバー用ソフト「Orbix E2A」を採用した。

 シーエスネットは、パソコンから新システムを利用するためのクライアント・ソフトも開発している。このソフトはマイクロソフトのWebサービス実行環境である .NET Frameworkで稼働する。今後は携帯情報端末から新システムを利用できるようにする予定だ。