自律コンピューティングを巡るサーバー・メーカー間の争いが激しさを増してきた。日本ヒューレット・パッカードとサン・マイクロシステムズ日本法人は11月から12月にかけて、それぞれ自社の自律コンピューティング構想を発表した。いずれも3年後の実現を目指す。構想を発表済みのIBMを追撃する。

図1●日本ヒューレット・パッカードの「UDC」とサン・マイクロシステムズの「N1」の強化計画
同じ機能名でも内容は両社で異なる場合がある
 自律コンピューティングを巡る動きがにわかに活発になってきた。日本ヒューレット・パッカード(HP)は12月4日、同社の自律コンピューティング構想「Utility Data Center(UDC)」を国内で発表した。現時点で実現可能な機能を、ハード/ソフトを組み合わせたソリューション商品として顧客に提供し始めた。米HPは昨年11月にUDCを発表している。

 サン・マイクロシステムズ日本法人は11月1日、「N1」の実現計画を日本で説明した。N1とは米サンが9月に明らかにした自律コンピューティング構想のこと。来年前半から本格的に製品化を始める(図1[拡大表示])。

 この分野で先行したIBMは今年10月、複数回に分けて自律コンピューティング構想「eLizaイライザ」関連の発表をした。一部製品の出荷も始め、自律コンピューティングの“先駆者”というイメージの定着を急ぐ。

 大手サーバー・メーカー各社が実現にしのぎを削る自律コンピューティングとは、「処理量の変動や機器障害があっても、サーバー・プラットフォームのサービス・レベルを一定水準に保つための自動管理技術」と要約できる。ここで言うサーバー・プラットフォームとは、サーバー本体やストレージ、ネットワークだけでなく、OSやミドルウエアも含む。

 自律コンピューティングが実現すれば、システム管理の負荷を大幅に軽減できる。ハードウエア資源の有効活用にもつながる。ビジネスの要求に応じて(オンデマンドで)必要なときに必要なだけ、ユーザーがコンピュータを利用できるようにする「オンデマンド・コンピューティング」を支える重要な要素でもある。

 各社は「自律コンピューティングを可能にする技術・製品をいち早く整備したメーカーが次の覇権を握る」と考え、研究・開発と製品化に力を注ぐ。

(鈴木 淳史)