八千代銀行は2003年1月に予定していた勘定系システムへの切り替えを2003年5月に延期した。自動振替の障害を復旧させる機能が完成しなかったためだ。2002年前半にUFJ銀行やみずほ銀行で起こったシステム障害を機に、八千代銀行は復旧機能の追加をシステム開発元のNECに依頼していた。
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図●八千代銀行の勘定系システム刷新の経緯 |
八千代銀が品質を問題視したのは、自動振替関連の機能。具体的には、自動振替が何らかの理由で失敗したときに、実行中の処理を取り消して、システムを正常状態に復旧する機能が「まだ実用レベルに達していない」と判断した。
自動振替はバッチ処理が中心であり、仕組みはそれほど複雑ではないが、処理パターンが多い。八千代銀の場合も1200パターンに達し、数多くのサブシステムやデータベースが関連する。テストもさまざまな状況を想定して実施しなければならない。膨大な件数のデータを処理するため、万が一処理に失敗すると、人手で正常状態に戻すのは簡単ではない。
2002年1月のUFJ銀行や同4月のみずほ銀行のシステム障害では、自動振替の処理遅れを解消するのにかなりの時間と人手を要した。八千代銀は自動振替処理が失敗した場合を想定して、人手による復旧作業をシミュレーションした。その結果、「手作業で復旧するにしても、それだけの人手を確保できないことがわかったため、今春に振替処理の自動復旧機能の追加開発をNECに依頼した」(笹館部長)。
NECは10月下旬の納品を目指して追加機能の開発を進めた。しかし八千代銀は、「追加機能の品質は、まだリリースする基準に達していない」と結論付けた。NECは「年内には問題ないレベルまで高められる」と申し出たが、八千代銀は「最終的には経営判断」(笹館部長)で延期を決めた。UFJ銀やみずほ銀のトラブル後、システム障害に対する社会の関心が高まっていることや、金融庁がシステム統合・刷新時のリスク管理徹底を各金融機関に呼びかけていることが、判断の背景にある。
八千代銀と同じような理由で、福島県の東邦銀行も新システムの稼働時期を2003年1月から2003年9月に遅らせた。11月20日に発表した。富士通の勘定系パッケージ「PROBANK」の第1号ユーザーである同行は、「東邦銀と富士通の双方がシステムの品質確認をいっそう重視した」(奥野伸也取締役システム部長)ことを延期の理由として挙げる。
十八、佐賀、筑邦の3銀行も10月、PROBANKによる3行共同システムへの移行を2004年から2006~07年に延期することを発表している。このほか島根銀行は11月25日、「パッケージ開発の遅れ」を理由にPROBANKの利用計画を撤回した。