年間1兆円と言われる電子政府関連予算。この膨大な予算からムダを排除すべく、財務省はプロジェクト・チームを発足。年末に予定されている国家予算の政府原案決定に向け、電子政府関連予算の見直しを急ピッチで進めている。しかし本誌の取材によれば、見直しの効果は残念ながら“期待薄”だ。

図●財務省は各省の査定担当者の横のつながりを作り、電子政府予算の適正化を狙う
CIO連絡会議が政府全体の業務改革/システム構築プランを策定する
 「従来の財務省の姿勢から考えると、画期的な改善策だ」。中央省庁の幹部がこう評価するのは、財務省が8月末に予算査定を担当する主計局に設けた「電子政府関係予算検討プロジェクト・チーム」である([拡大表示])。

 このチームでは各省庁の査定を受け持つ担当者が一堂に会し、それぞれの省庁の要求する予算額を比較・検討する。これまで基本的に予算の査定は「縦割り」で、ある省庁の担当者が、他の省庁の要求額を参考にする仕組みは財務省になかった。目標額こそ定めないが、横並びで比較・検討することで各省庁における電子政府予算のムダを見つけて圧縮を図るのが狙いだ。現在、来年度予算の見直しの大詰めを迎えているところである。

 年間1兆円と言われる電子政府予算のムダに対する批判は多い。「ある省からは、予算を要求する名目作りのために、本来必要ないシステム提案を要請された」(大手ベンダー営業)、「汎用電子申請や認証局といった同機能のシステムを各省庁が個別開発している。明らかに重複投資」(コンサルティング会社幹部)といった証言・指摘が後を絶たない。今回の取り組みで、来年度からこうしたムダを排除できるのではと期待する声もある。

 しかし本誌の取材によれば、来年度予算におけるコスト削減効果はほとんど期待できない。従来から電子政府予算に関しては、総務省がシステム部門の立場で全省庁分を取りまとめて査定し、財務省に助言してきた。今回、財務省が直接査定することで多少の効果は見込めるが、施策の内容は従来とあまり変わらない。

 加えて問題なのは、チーム内にITの専門家がいないことだ。本来ならシステムの中身に踏み込んで議論しない限り、コストを大幅に削ることなどできないはず。「省庁の要求額を横並びで比較したときに削減できる金額は経験上、1割にも満たなかった」と、長年総務省で予算査定に携わってきた幹部は語る。

 より根本的な問題も立ちふさがる。各省庁の予算要求が、相変わらず縦割りの論理に基づいていることだ。電子政府予算を効果的に削減するには、各省庁が協力してシステム開発を一本化したり、共通業務を標準化・簡素化することが欠かせない。だが現在財務省が査定中の予算は「各省庁の担当する業務システムは各自の責任で構築する」という縦割りの論理を前提としたもの。政府全体の最適化を議論するといったプロセスを経ておらず、省庁ごとの部分最適に陥っている。

 この課題に対処するため政府は9月、内閣官房に各省庁の次官や官房長クラスで構成する「CIO連絡会議」を設置。各省庁が連携して政府全体でムダが出ないよう考慮しながら、業務改革や情報化推進計画などを策定する。CIO連絡会議で踏み込んだ議論がなされて、その結果が来年度の各省の予算要求に反映されるようなら、財務省の取り組みが実を結ぶ可能性もある。

(広岡 延隆)