マイクロソフト日本法人は10月17日、製品サポートに対する新方針を発表した。目玉は、顧客が望む限り旧製品のサポートを続ける契約体系を用意したこと。顧客企業はようやく、「旧製品を使い続ける」権利を得ることになる。バージョンアップを“強要”する従来とは正反対の方針だ。

図●マイクロソフトの企業向け製品のサポート期間
サポートとは、製品の導入や操作に関する問い合わせの応対や障害回避策の提示、バグ修正ファイルの提供などのこと。このほかに、マイクロソフトは製品の技術情報を、Webサイト上で出荷日から8年間提供する
 マイクロソフト日本法人はOSやデータベース・ソフトをはじめとする企業向け製品に対して、標準のサポート期間を5年、延長のサポートを2年と規定。さらに、延長サポートが終了したあとでも、顧客企業が引き続き個別に旧製品のサポートを受けることが可能な契約体系を用意した([拡大表示])。

 今回の目玉である個別サポートは、例えば「基幹系システムにマイクロソフト製品を導入しているので、10年間は製品のサポートを続けてもらわないと困る」という顧客企業の要望に応えるものだ。こうした企業は通常、マイクロソフトが用意する大規模顧客向けのサポート契約「プレミアサポート」(年額1000万円)を利用している。

 それにもかかわらず、製品のサポ-ト期限が迫ると、顧客企業は「やむを得ず製品をバージョンアップする」、もしくは「サポートなしで使い続ける覚悟を決める」という不合理な選択をしなければならなかった。

 しかも、すべての製品のサポート期限があらかじめ明確になっていたわけではない。マイクロソフト日本法人の松浦清 執行役員は、「サポート期限が次期製品の出荷時期に左右されることも少なくなかった」と認める。それだけに顧客企業は、マイクロソフト製品の出荷動向を気にとめなければならず、結果的に顧客の混乱を招いていた。

 個別サポートの登場により、プレミアサポートの利用企業はようやく、マイクロソフト製品のサポート期限に影響されることなく、自社の投資計画に基づきシステムの刷新計画を策定することが可能になる。松浦執行役員は、「製品サポートに対する姿勢を改めた。サポート期限や方針を明確に提示することが重要だという結論に至った。」と話す。

 今回の新方針は世界各国の顧客に適用されるが、8年目以降の個別サポートについてはマイクロソフト日本法人の強い要望によって盛り込まれた。日本法人の阿多親市社長と鈴木和典取締役が直接、米マイクロソフトを訪問。旧製品の継続サポートの必要性を直訴して実現した。米マイクロソフトでプロダクト サポート・サービス部門を率いるローリー・ムーア バイス・プレジデントは、「日本法人が要請した個別サポートは重要と判断した」と語る。

 ただし、新方針にも課題がある。それはサポート料金だ。現時点で延長期間以降のサポート料金は未定。ただ、延長期間以降は、標準のサポート期間に比べてサポートを受ける企業が少なくなる分だけ、料金がだんだん高くなるとみられる。「サポートを続けるのに必要な費用を契約企業で折半してもらう形で、料金を算出する」(松浦執行役員)からだ。延長期間以降のサポート料金は、来年1月にも発表する。

(大和田 尚孝)