サイボウズは9月5日,ネオジャパンのWebグループウエア「iOf- fice2000」が「サイボウズ Office」を悪質に模倣しているとして,訴えていた裁判で敗訴した。試行錯誤して作成した「ソフト製品の画面デザイン」を守ることの難しさが改めて浮き彫りにされた。同社は9月中にも控訴する。

図●今回の裁判で争点の一つとなったスケジュール表示画面。
サイボウズの画面(左)にあるプルダウン・メニュー,個人とグループの予定を分けるバー,前後の日付に移動する三角ボタンが,ネオジャパンの画面(右)に類似しており,サイボウズ側は「悪質に模倣したもの」と主張していた
 「なぜなんだ。思い出すだけでも眉間にしわが寄ってしまう」。サイボウズの高須賀宣(とおる)社長は,本誌の取材に対してこう答えた。

 今回の裁判では,ネオジャパン(横浜市)のWebグループウエア「iOffice 2000 バージョン2.43,同3.0」が「サイボウズ Office」を模倣しており([拡大表示])著作権侵害に当たるとして,サイボウズが同製品の使用許諾の差し止めや謝罪広告などを求めていた。これに対して東京地裁は,「ビジネス・ソフトの画面表示や画面遷移にも著作権はある」と認定したものの,両製品の画面は「ありふれた構成」と判断。「著作権が生じるための“表現上の創作的特徴”が共通するとは認められない」とした。

 Webグループウエア市場には現在,数十種類もの製品が存在する。いずれもスケジュール共有や掲示板など基本機能を備えている。このため,「真似ようという認識はなくても似てしまう。Webの画面を設計する上でのセオリーもある」(Webグループウエア「La!Cooda WIZ」を開発したシステム・コンサルタンツ システム開発部システムソリューションの大澤日出男氏)。とはいえ,サイボウズの高須賀社長は,「様々なWebグループウエアを調査したが,ほかにも似ている製品はある。しかし明らかなフリーライド(労せずして得ること)行為であるのはネオジャパンの製品だけだ。ここをはっきりさせたい」と反論する。ネオジャパン側の弁護士は,「フリーライドは容認されるものではないが,今回の判決ではフリーライドではないと認められたからとがめられなかった」(松本法律事務所の松本直樹弁護士)と説明する。

 今回の裁判をきっかけにサイボウズは,画面デザインを守るための取り組みを始めた。「今回の裁判までは,ソフトの開発時に特許を取っておくなど,法的な対応が甘かったかもしれない」(高須賀社長)との反省からだ。逆に訴訟トラブルを回避するための動きも出ている。Webグループウエア「GWW 2000」を開発・販売するAIMCOM(東京都港区)の伊東和彦社長は「サイボウズが仮処分申請をした去年6月の段階で,開発担当者全員にサイボウズの模倣をしていないことを確認した。現在の開発作業の中でも関連する資料や書類を保存して,模倣がないことを証明できるようにしている」と説明する。ネオジャパンも「新版の『desknet’s』を開発するときは,iOfficeで画面デザインに携わった担当者はあえて外した」(齋藤晶議社長)。

(坂口 裕一)