ハードウエア資源をユーザー企業にネットワ-ク経由で貸し出し,使用量に応じて課金するサービスが相次ぎ登場した。米IBMはLinuxサーバーを,コンパックコンピュータ日本法人はストレージを貸し出す。いずれのサービスも,ユーザー企業からの要求に応じてハードウエア資源を即座に追加できる。

 米IBMとコンパック日本法人のような形態で提供するサービスを,「ユーティリティ・サービス」と呼ぶ。電気や水道といった公共財(ユーティリティ)と同じく,利用した分だけ料金を支払う。

 ユーティリティ・サービスを利用すると,ユーザー企業は初期投資をほとんどせずに,短期間でシステムを構築できる。システム稼働後の運用もサービス提供ベンダーに任せられる。このため,システムを素早く立ち上げたい企業や,社内の運用担当者の負荷を軽減したい企業の注目を集めている。

表●米IBMとコンパックコンピュータ日本法人のユーテリィティ・サービスの概要

 利用するハードウエア資源の量を柔軟に変更できることも特徴の一つだ。ホスティングに代表される,これまでのハードウエア貸し出しサービスは契約時に決めた量しか利用できないのが一般的だった。電子商取引システムやWebサーバーのように,不特定多数の利用者がアクセスし,必要な資源量が突然増えるシステムに適用する際は,使い勝手が悪かった。

 広域LANをはじめとする安価な高速ネットワークが普及し始めたことで,ユーティリティ・サービスの利用は現実味を帯びてきた。米IBMとコンパック日本法人は,他社に先駆けてサービスを提供し,将来のシェア確保を狙う([拡大表示])。

 米IBMが米国市場において7月1日から提供し始めた「Linuxバーチャル・サービス」は,メインフレーム「e server zSeries」を論理的に分割した,Linuxが動く“仮想サーバー”を貸し出すもの。ユーザー企業は要求を出してから数分後には,仮想サーバーの処理能力を増やせる。

 利用料金は仮想サーバー1単位当たり月額300ドルである。IBMは1単位の処理能力を明らかにしていないが,最新版のXeonを搭載するパソコン・サーバーの2分の1から3分の2程度とみられる。日本市場での提供は,今後検討する。

 一方,コンパック日本法人が7月から提供し始めた「ペたちゃん@サービス」は,ストレージの利用権を貸し出すサービス。日本法人が独自に開発したサービスだ。

 ディスク装置本体はもちろん,ファイル・サーバー機能を提供するソフトウエアや,ディスク装置にアクセスするための広域LANサービスをセットで提供する。利用料金は,1Gバイト当たり月額3980円。この料金には,バックアップや容量管理などの運用・監視サービスも含まれる。

 ペたちゃん@サービスも,「ユーザーから午前中に注文をもらえば,当日中にストレージ容量を拡張する。あらかじめオプション契約をすれば,30分程度で拡張することも可能」(コンパック アウトソーシング事業推進本部の藤澤誠氏)という。ストレージの追加は1Gバイト単位でできる。

(森 永輔)