業務システムの市場を狙い,Linuxディストリビュータが動き出した。Linuxを採用する企業が急増していることを受け,米ターボリナックスなど4社が5月30日に提携した。業務システム向け製品を共同開発する。最大手の米レッドハットの動向によってはもう一波乱ありそうだ。

図●業務システム向けLinuxを巡る業界図
 オープンソースOSのLinuxを開発・販売するディストリビュータの業界再編が始まった。業務システム向け市場が伸びていることが引き金になり,まずは2大陣営が形成された([拡大表示])。

 一方は業界最大手の米レッドハット陣営。同社はいち早く6月から業務システム向け「Red Hat Linux Advanced Server 2.1」の出荷を始めた。

 他方は米カルデラ・インターナショナル,米コネクティバ,独スーゼ,米ターボリナックスの「United Linux陣営」だ。4社は5月30日,次期製品を共同で開発することを発表した。

 この陣営は,ディストリビュータ4社が業務システム向け新製品「United Linux」の開発コストを削減するために生まれた。「これまで複数の会社が重複して開発を進めてきたが,これからは4社がそれぞれ培ってきた強みを生かし,より良い製品を作る」。米カルデラのランサム・ラブCEOは設立経緯をこう語る。共同開発した製品の販売やサポートについては,各社ともこれまでどおり別々に行う。

 United Linuxの製品化は早く進みそうだ。ターボリナックス ジャパンの矢野広一社長は「今年7月にベンダー向けにベータ版をつくり,11月には各社から製品を出荷したい」と語る。

 4社はレッドハットを含めたディストリビュータ各社に,共同開発に加わるよう要請している。しかし,具体的な参加条件が6月末にならないと固まらない。そのためレッドハットも答えを出せないという。日本法人の平野正信社長は「本社が要請を受けたということは聞いている。しかし,具体的な協力内容が分からないため,参加も不参加も表明できない」としている。

 アプリケーション・ベンダーやハード・メーカー,インテグレータにとってはバラバラだった4社が共通の製品を出すようになったことで検証作業が少なくなるというメリットがある。United Linuxへの対応を表明した富士通の工内(くない)隆Linux統括部統括部長代理は「これまではハードとミドルウエアを複数のディストリビューションに対して検証しなければならなかった。United Linuxにまとまって検証が楽になる分,顧客の要望に対応するスピードや品質を高められる」と期待する。

 United Linuxに賛同を示す企業は多い。米ボーランド・ソフトウエア,米コンピュータ・アソシエイツ,富士通,米ヒューレット・パッカード,米IBM,米インテル,NEC,独SAPなどだ。

 一方で,まだ“様子見”のベンダーもある。その主な理由はUnited Linuxの開発にレッドハットが入っていないことだ。Red Hat Linuxをプリインストールしたサーバーを出荷,Linux関連事業に力を入れるデルコンピュータもその1社。同社は6月6日に米オラクル,米レッドハットと業務システム販売で提携した。

 デルの営業技術支援本部の長谷川恵本部長は「当社は“標準”と認められた製品のみを扱う。United Linuxが“標準”になるかは未知数」と語る。日立製作所もおおむね同じ意向だ。

矢口 竜太郎