急成長から一転,大幅に業績が悪化したサプライチェーン計画(SCP)ソフト最大手の米i2テクノロジーズが,業績の回復に本腰を入れ始めた。既存のユーザー企業に対するサポート体制を強化して収益を確保する。効果に応じて導入費用を設定する成果報酬を取り入れることも検討している。

写真●5月31日付でi2テクノロジーズ・ジャパンの社長兼CEO(最高経営責任者)に就任する横溝陽一氏(左)と,中根滋 米i2テクノロジーズCOO(最高執行責任者)

 i2テクノロジーズは過去4年間,売上高で前年比50%以上の急成長を遂げてきた。ところが2001年の売上高は9億8600万ドルで,前年比10%以上も減少した。ITバブルの崩壊に加えて,米国の景気低迷が響いた。

 同社は,この苦境から脱却するために大きく二つの施策を打つ。一つは,ユーザー企業向けサポート体制の強化。SCPソフトを導入済みのユーザー企業からの収益を確保することが狙いだ。もう一つは,サプライチェーン・マネジメント(SCM)で「利益を最大化する」という新たな概念を打ち出し,製品の需要予測などに使うSCPソフトへの新規需要を喚起することである。

 第1の施策であるサポート体制の強化は,i2テクノロジーズにとって長年の課題だった。今年4月に本社COO(最高執行責任者)に就任した中根滋氏(写真右)は,「案件が多すぎたため,SCPソフトを導入したユーザー企業に対するサポート体制が手薄だった点は否めない。ソフトを導入してから2~3年間,ユーザー企業の担当者に連絡しないケースさえあった」という。

 同社は今後1~2年をかけてコンサルティング部門と,SCPソフトのカスタマイズを担当する開発部門を強化する。ユーザー企業の経営環境が変化した場合,コンサルタントが即座に既存のSCMを見直し,開発部門のエンジニアがシステムを短期間で修正できる体制を整える。

 i2テクノロジーズが打ち出すもう一つの施策は,「SCMの目的は利益の最大化である」という考え方を前面に押し出すこと。従来,SCMのメリットとして在庫削減や欠品防止をうたうことが多かった。SCMが経営課題であることをより強く訴えることで,ユーザー企業の新規獲得を狙う。

 概念を打ち出すだけでなく,SCPソフトの導入や修正にかかる費用を導入後の効果に応じて決めることも検討する。「ユーザー企業がソフトを導入してもバリュー(利益)を生み出さなければ意味がない。単なるITベンダーではなく,パートナとしてユーザー企業にバリューを提供することで貢献したい」(中根COO)と考えたためである。

 これらの戦略は,2001年に前年比100%増の売上高を達成して好調な日本法人でも展開する。そのための指揮官として,三菱商事の横溝陽一氏(写真左)を5月31日付でi2テクノロジーズ・ジャパンの社長兼CEO(最高経営責任者)として迎え入れる。横溝氏は,食品卸大手である菱食のSCMプロジェクトの中心人物だった。

 SCPソフト市場でi2テクノロジーズとしのぎを削る米マニュジスティックスも,SCMによる「利益の最大化」を前面に押し出すようになった。「(SCMでは)利益目標を設定して,それを達成するために『いつ,いくらで,何台の製品を売るか』という判断が重要だ」(マニュジスティックス・ジャパンの稲井秀次副社長)。SCPソフト・ベンダー間の競争は第2ラウンドに突入したと言える。

(栗原 雅)