写真●米サン・マイクロシステムズのスコット・マクニーリ会長兼CEO(最高経営責任者,左)と米アパッチ・ソフトウエア・ファウンデーションのジェイソン・ハンター副社長(右)は3月26日,「JavaOne」の基調講演でJavaのオープンソース化について発表した
 Javaが“オープン化”に向けて大きく前進した。米サン・マイクロシステムズは「JavaOne」で,Java仕様の“オープンソース版”を基本的に認めることを表明。今夏をメドに,そのための規則改訂を進めていく。Javaに対するサンの権限は一層小さくなり,企業や学生がJavaを自由に使える道が開けた。

 Javaのオープンソース化構想が明らかになったのは,3月26日に行われたJava開発者向けカンファレンス「JavaOne」(米サンフランシスコで開催)の基調講演のことだ。

 サンのスコット・マクニーリ会長兼CEO(最高経営責任者)とともに,米アパッチ・ソフトウエア・ファウンデーション(ASF)のジェイソン・ハンター副社長が壇上に登場(写真[拡大表示])。ASFは,オープンソースのWebサーバー「Apache」を支える非営利会社である。ハンター副社長は,「サンとASFは,サンがJava仕様互換のオープンソース実装(インプリメンテーション)を認めることで合意した」と報告。Java開発者から大きな拍手がわき起こった。

 ASFは,サンに「Javaをオープンソース化せよ」と圧力をかけていた急先鋒だった。ASFは,サーブレット・エンジンの「Tomcat」やフレームワークの「Struts」などのJavaソフトを開発しており,Javaコミュニティへの影響力が強い。今回の発表は,ASFの要求にサンが応じる形で実現したものだ。

 ASFに限らず,「サンはいまだにJavaをコントロールし続けている」という批判は根強い。サンはJavaに対し,LinuxやApacheのようなオープンソースのライセンス形態を適用していないからだ。このため,サードパーティがJava仕様に準拠した製品を開発しようとすると,サンとライセンス料や様々な条件について交渉する必要がある。2001年9月には,米ルトリス・テクノロジーズというベンチャ会社がオープンソース版のJ2EE(Java2 Platform,Enterprise Edition)サーバー・ソフトの製品化を計画したが,サンとの交渉がまとまらず,製品化を断念するという“事件”も発生した。

 Java仕様がオープンソース化されれば,Javaの製品化の敷居はぐっと低くなると予想される。サンのチーフ・リサーチャ兼ディレクタのジョン・ゲージ氏は,「学生や小さな企業が,しがらみなしにJava仕様を使えるようになる点が大きい。決定は5年遅かった」とみる。ウルシステムズ(東京都中央区)の平沢章ディレクターも,「当社のビジネスに当面,直接的なメリットはないが,Javaがよりオープンになるのは基本的に歓迎すべきこと」と話す。

 サンはこれまでも段階的にJavaのオープン化を進めてきた。Java関連の仕様はすべて,現在では「JCP(Java Community Process)」と呼ぶ合議制のプログラムを経て作成されている。JCPには約350の組織/個人が参加。すでにJ2EE1.3など28種類の仕様(JSR:Java Specification Requestsと呼ぶ)が確定,134種類の仕様が策定中だ(4月中旬時点)。今回の発表により,サンのJavaに対する影響力は一層小さくなると言える。

 JCPでは現在,JCPの規則改正の作業を進めている。新規則では,JSR互換のオープンソース実装を許可するとともに,JSRとともに提供されるRI(Reference Implementation:Java開発キットに含まれる実装)などのオープンソース化も可能にする。作業は7~8月ごろををメドに完了する予定だ。

(田中 淳)