調達業務で取引先選定を支援

主要3社が「ソーシング・ソフト」を今春投入

日経コンピュータ 2002年2月25日号,18ページより

 調達業務における取引先の選定作業を支援する「ソーシング・ソフト」が相次いで登場する。電子購買ソフトを販売する日本アリバ,コマース ワン,日本オラクルが3月から製品を出荷する。依頼文書の作成や提案内容の評価作業を効率化できる。事務コストに加えて調達コストも下げられる,という。

図●調達業務におけるソーシング・ソフトの役割。業者選定とそれに付随する作業を支援する

 “ソーシング・ソフト(sourcing soft)”という聞きれない言葉は,調達業務における業者選定の作業と,購買履歴分析といった選定に付随する作業を支援するツールを意味する([拡大表示])。すでに購買業者が決まっている場合は,電子購買ソフトを使って業務効率を向上できた。しかしその前段階の業者選定は,これまで手作業でするしかなかった。

 日本アリバの笹 俊文執行役員は,「米国の実績では,当社のソーシング・ソフトを使うと業者に情報提供を依頼してから業者の決定までにかかる工数が平均で2分の1程度に減る」とソーシング・ソフトがもたらす効果の大きさをアピールする。

 日本アリバの「Ariba Enterprise Sourcing」とコマース ワンの「Commerce One Source」,日本オラクルの「Oracle Sourcing」の機能に大きな差はない。中核となるのは二つの機能である。

 一つは業者選定の最初の作業である「依頼文書の作成」を支援する機能。3社のソーシング・ソフトがあらかじめ用意しているひな型を使えば,「RFP(提案書依頼)」や「RFQ(見積書依頼)」を簡単に作成できる。もう一つは,業者から返信された提案や見積もりを,あらかじめ定義したルールや重み付けに基づいて順位付けする機能である。

 このほかコマース ワンとオラクルの製品は納期などの契約項目が遵守されているかを追跡調査する機能も備える。業者の評価に使う。アリバも別製品で同等の機能を提供する。

 各種依頼文書の作成や順位付けが自動的にできれば,調達担当者の作業工数は大きく削減できる。同じ工数を費やせば,商談を進める業者の数を増やすことも可能だ。こうすれば「業者間の競争が活発になり,調達コストの低下が見込める」とソーシング・ソフトを販売する各社は異口同音に主張している。日本アリバの笹執行役員は「当社のソーシング・ソフトを使うことで,調達価格を従来よりも20%引き下げた事例がすでに米国で出ている。平均でも13%程度は下がっている」という。

 さらに3社のソーシング・ソフトには,「経験の浅い調達担当者でもベテランと同様の依頼文書を作成できる」,「提案や業者を評価する基準が担当者間で統一できる」,「業者選定の過程が透明になる」といった定性的な効果も期待できる。

 前述のように,3社のソーシング・ソフトの機能に大きな差はない。自社のERPパッケージや電子購買ソフトとの密接な連携を売り物にしている点も同じだ。ただし,各社のソーシング・ソフトは単独でも利用できる。

 オラクルは「自社のERPパッケージとの親和性や基幹系システムとの接続ノウハウ」(内田雅彦Eビジネス推進部ディレクター)をアピールする。マーケットプレイス市場で大きなシェアを持つコマース ワンは「当社の製品を利用したマーケットプレイスに参加する全世界25万社の企業情報を提供できる。業者選定に役立つはずだ」(コマース ワンの清瀬裕二ビジネスデベロップメント シニア マネージャー)と訴える。アリバは電子購買ソフト「Ariba Buyer」のユーザー・ベースを利用する方針だ。

(森 永輔)

本記事は日経コンピュータ2002年2月25日号に掲載したものです。
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