システム開発プロジェクトを,パソコン上で疑似体験できる研修ソフトが登場した。プロジェクトの実行状況が次々にシミュレートされるので,プロジェクトマネジャは自分の判断を入力していく。開発要員が病気になったり,やる気を失うといった,“胃が痛くなる”イベントもたくさん盛り込まれている。

図●アルテミス インターナショナルの「ONTRACK」で使うシミュレータ・ソフトの画面例
電話や電子メール,秘書の登場などによってイベントが発生する
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 このソフトは,プロジェクトマネジメント関連のコンサルティングと研修を手がける,アルテミス インターナショナル(東京都千代田区)が2001年12月から提供を始めたもの。シミュレータを利用したプロジェクトマネジャ教育サービス「ONTRACK」の中で利用する。シミュレータ・ソフト自体は,米国本社が開発した。

 ONTRACKは,プロジェクトマネジメントの基礎教育とシミュレーションの実施,結果についての討議をまとめたもの。シミュレータを使い,ゲーム感覚で,プロジェクトの疑似体験ができる。日程計画や人員計画を演習するものは多いが,プロジェクトの実行段階をリアルタイムでシミュレートできるものは珍しい。

 特徴はプロジェクト・メンバーのモチベーション(動機付け)を重視していること。実際のプロジェクトにおいて,人的要素の影響は大きく,予期せぬ問題が発生しやすい部分である。

 シミュレータの中では,プロジェクトマネジャとして判断を求められる場面がいくつも発生する。部下が突然病気で休む,難しい仕事を与えるとやる気をなくす,チーム内のメンバーの相性が悪くてケンカをする,といった具合である。

 プロジェクトマネジャは,人に関する問題に対して,飲み会を開く,面談する,技術トレーニングに出す,といった対策を打てる。しかし対策が適切でなかった場合,メンバーのモチベーションが下がり続け,ひいては作業効率が落ちてコスト増,納期に間に合わないという結果が表示される。

 このシミュレータを使う際には,4人一組で1台のパソコンを囲んで疑似プロジェクトに臨む。スケジュールの作成,開発メンバーの配置などという計画から始める。シミュレータに登場する要員には,ITスキルや性格,仕事の進め方などが決められており,これらを参考に業務を割り振る。

 4人の参加者はコスト,納期,品質,モチベーション維持のどれかの管理を担当する。コスト,納期,モチベーションの状況は数値としてリアルタイムに表示される。メンバーの問題のほかにも,顧客からの仕様変更や技術的な問題,テスト段階での手戻りといった問題が起きる。

 ONTRACKのコースを終了した参加者は,プロジェクト管理資格の「PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)」を更新するときに必要な「プロジェクト経験」の一部としてONTRACKの経験を申請できる。PMPでは資格取得後に,一定のプロジェクト経験を積む必要がある。

 ONTRACKは提供方法にはソフトの販売方式と研修方式のニつがある。ソフト単体の販売価格は300万円から。研修方式の場合,2日間のコースで1人10万円程度。

(鈴木 孝知)