国内大手コンピュータ・メーカーは,異なるベンダーのストレージ装置を一括管理できる製品を発売した。「バーチャリゼーション」と呼ぶ機能を搭載したストレージ管理製品である。ファイバ・チャネルやIPネットワークなどを介して接続するバックアップ用ストレージ装置も管理しやすくなる。

表●国内大手コンピュータ・メーカーが販売するバーチャリゼーション機能を備えるストレージ管理製品

 国内大手コンピュータ・メーカー3社は,バーチャリゼーション機能を備えるストレージ管理製品を出荷すると11月に相次いで表明した([拡大表示])。NECが11月1日にストレージ管理サーバーを発表したのを皮切りに,8日に富士通がストレージ管理ソフトを,30日には日立製作所が同じくストレージ管理ソフトの出荷計画を明らかにした。

 バーチャリゼーション機能を使うと,異なるベンダーのストレージ装置を,ネットワークを介して一括管理できる。例えば,違うベンダーの5台のストレージ装置から20Gバイトずつ容量を確保し,100Gバイトの仮想的なストレージ装置として利用することができる。バックアップ時にいちいちファイルを分割して各装置にデータを格納するといった手間が不要になる。逆に一つのストレージ装置を複数の仮想的なストレージ装置に分けて利用することも可能である。ベンダーやストレージ装置の違いを意識せずに,複数のストレージを単一のウインドウで操作できるのも特徴だ。

 国内大手メーカーがバーチャリゼーション機能に目を付けた理由は,「多様化したストレージ装置を一括管理したいというユーザー企業が出てきているため」(NEC,日立製作所)である。

 システム構築で複数ベンダーの製品を利用するマルチベンダー化が進んだことにより,さまざまなベンダーのストレージ装置が混在するシステムが増えている。さらに,NAS(ファイル共有機能に特化した単機能サーバー)やIPネットワークなどを使ったバックアップ手法の登場で,ネットワークを介して遠隔地のストレージ装置を管理する必要性が高まってきた。ストレージ容量が急速に増大し,システム管理者の手間が日に日に多くなっていることもあって,管理の一元化が急務になった。

 ユーザー企業のニーズに早急に応えるために,国内大手メーカー各社は,米ストレージ管理ソフト大手のファルコンストア・ソフトウェアやデータコア・ソフトウェアの製品を導入する。「自社開発も考えたが,市場への投入時期を早めるためデータコアに出資し,同社のバーチャリゼーション製品を販売することにした」(日立製作所)。

 ただし,バーチャリゼーション機能を必要とするユーザー企業はまだ一部に限られる。国内では日本IBMやファルコンストア,データコアなどが半年ほど前からバーチャリゼーション機能を持つ管理ソフトを販売していたが,「国内では認知度がまだ低い」とファルコンストア日本法人の小今井裕氏は述べる。ただし今後は,「顧客企業を多数抱える国内大手メーカーが販売することで,バーチャリゼーション機能を利用するユーザー企業が大きく増える」と同氏はみている。

(鈴木 孝知)