ソフトハウスのグローバルフレンドシップ(東京都新宿区)は,“割り符”方式によるファイルの保護技術を開発した。2002年3月をメドに,同技術を実装したパソコン用ソフトを製品化する。重要なファイルを細かく分割して別々に保存することで,簡単に他人に見られないようにする。

図●割り符方式を使った処理の流れ
ファイルを元に戻すための構成情報も分割する

 割り符の本来の意味は,木片などに文を書いて証印を中央に押し,二つに割ったもの。古くから証明書の一種として利用されていた。グローバルフレンドシップはこの仕組みを重要なファイルの保護に応用。第三者に見られたくないファイルを圧縮・暗号化した後,分割して保存できるようにした([拡大表示])。同社の保倉豊社長は,「割り符方式は,ファイルの保護方法の中でも実用化されていない手つかずのものだった。セキュリティを本気で考えている人にとって,有効な方法になるだろう」と自信を見せる。同社は割り符方式に関連する特許の申請・取得を進めている。

 ファイルをいくつに分割するかは自由に設定できる。分割したデータはパソコンのハードディスクや,メモリースティックなどの記憶媒体,データセンターのサーバーなどに分散させて保存することが可能だ。「分割の処理には独自開発のエンジンを利用しており,分割したデータの一部から元のファイルを復元したり,内容を類推することはできない。ファイルの構成情報も分割するので,元のファイルを何個に分割したかさえ,他人に知られることはない」(保倉社長)。

 正規のユーザーがファイルを復元するときは,分割したデータのすべての保存先を指定すれば,元に戻すことができる。ただし,例えばここでメモリースティックに保存したデータの断片がない場合は,ファイルを元に戻すことができない。

 これまでファイルの保護方法としては,ファイルを暗号化したり,ファイルへのアクセス権限を設定する方式があった。しかし,ファイルを単に暗号化しただけでは解読される恐れがあり,暗号化に使うカギを厳重に管理する必要もある。また,アクセス権限を設定しても,パスワードなどを盗まれると不正にアクセスされる危険がある。これに対し,割り符方式では,分割した個々のデータだけでは価値を持たない。このため,ハードディスクの障害などに備えて,分割した各データのバックアップをとっても,全体のセキュリティは低下しない。

 グローバルフレンドシップは2002年3月をメドに,パソコン上で動作する割り符方式のファイル保護ソフトを製品化する。同時に,ユーザーが分割したデータをデータセンターにバックアップするサービスも提供する。「サービスの料金は,高くても月額数百円程度にする」(保倉社長)。

 さらに同社は,システム・インテグレータなどと共同で,割り符方式をさまざまな分野に普及させていく方針。「契約を結んだ二つの会社と立会人を含めた3社が,それぞれ重要なファイルの断片を保管するといった用途も考えられる」(保倉社長)。

(坂口 裕一)