PDA(携帯情報端末)メーカー各社が相次いでシステム・インテグレータとの提携を進めている。システム・インテグレータの協力を得て,自社製品を企業のモバイル・システムの端末として売り込むのが狙いだ。通信インフラを確保するために,通信事業者と手を組むPDAメーカーも現れている。

東芝やカシオ計算機,パーム コンピューティングなど,PDAメーカーがシステム・インテグレータの協力を得るべく奔走している。2001年8月にWindows CE搭載の「GENIO e」を投入し,新たにPDA市場に参入した東芝は10月,インテックとの間で企業モバイル・システム構築に関するパートナ契約を締結した。東芝はすでに日本ユニシスや野村総合研究所とも8月に同様の契約を結んでおり,このような「協力相手」は合計で15社にも及ぶ。

図●PDAメーカーとシステム・インテグレータが協力関係を結ぶ狙い
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 Windows CE搭載のPDA「CASSIOPEIA E-707」などを販売するカシオ計算機も同様に,インテグレータとの協力関係を強化しつつある。CASSIOPEIAを使った企業モバイル・システム構築を活性化するためのパートナ会を9月に設立。この組織にはNTTデータや富士通をはじめ合計70社のインテグレータが名を連ねる。また,これらに先立ち,パーム コンピューティングの日本法人は4月に,新日鉄ソリューションズや大塚商会など7社のインテグレータと企業システム構築に関するパートナ契約を結んだ。

 PDAメーカー各社がこのような協力関係を作る狙いは,大きな成長が見込める企業モバイル・システム市場に自社製品を売り込むことにある。「コンシューマ市場以上に期待が持てる」(東芝)。実際,外回りの営業担当者がPDAから社内システムにアクセスし,顧客情報を参照するといったニーズは大きくなりつつある。
 企業向けに売り込みを図る場合,PDA本体を用意するだけでなく,PDA上で動くソフトや,PDAとデータ交換するサーバー・システムの構築が欠かせない。そのためにPDAメーカーは,“専門家”であるインテグレータの力を借りようとしているわけだ。

 もちろん,インテグレータ側も大きな期待を寄せている。東芝のパートナである野村総合研究所は,「PDAの高性能化によって,大量の情報を格納しておき,外出先で検索・閲覧することが容易になってきた。今後はPDAメーカーと組んで,将来性のあるモバイル・システム構築の案件を二人三脚で推し進める」(プロダクツ・ソリューション事業本部システム商品事業部の大山宣之システムコンサルタント)。

 PDAメーカーが組む相手はインテグレータだけにとどまらない。無線通信のインフラを確保するため,主要PDAメーカーはPHSデータ通信サービスを手がける日本通信(東京都品川区)と提携している。NECはPDAの新機種「PocketGear」を発表した10月に日本通信と提携。PDAの「iPAQ Pocket PC」を販売しているコンパックコンピュータ日本法人も9月に日本通信と提携済みである。

 日本通信は日本初のMVNO(仮想移動体通信事業者)。DDIポケットなどの通信事業者から回線を大口で借り受けて,企業向けに通信サービスを提供する。PDAメーカーはこうした企業の協力を得ることで,拡販の基盤を着々と整えつつある。

(高下 義弘)