米IBMは2001年末に,UNIXサーバー「e server pSeries」の次期製品「Regatta(開発コード名)」を出荷する。動作周波数が約1.1 GHzと,同社製プロセサで初めて1GHzを突破した「POWER4」を,最大32個搭載。次世代サーバー開発計画「eLiza」で実現する機能の一部も搭載する。

 pSeriesの次期製品「Regatta(開発コード名)」のラインアップは,サーバー3機種とワークステーション1機種。最上位機種に当たる「H」は,最大32プロセサ構成が可能。プロセサの動作周波数を現行の600MHzから約1.1 GHzに高めたほか,データ入出力機構を改良した。こうした強化により,現行の最上位機種「pSeries 680」に比べて,「処理性能が80%ほど向上している」(UNIX関連の先端技術開発を担当するデビッド・テュレック副社長)。

 トランザクション処理性能評議会(TPC)が認定した,pSeries 680のトランザクション処理性能は22万807tpm(トランザクション処理/分)C。これらから計算すると,Regattaの処理性能は40万tpmCに迫ることになる。米サン・マイクロシステムズや米ヒューレット・パッカードの最上位機の処理性能を,はるかに上回る()。

 Regattaは,次期主力プロセサの「POWER4」を搭載する。動作周波数は1.1GHzである。IBMは続いて,2002年に1.4GHz版,2003年には1.8GHz版のPOWER4を投入していく。

 米IBMは,2002年に登場する1.4 GHz版以降のPOWER4に対して,最新のプロセサ技術を適用する。具体的には,配線間の電気的干渉を軽減するために,既存のシリコンに比べて誘電率が低い「low-k(低誘電体層間絶縁膜)」と呼ぶ素材を利用する。low-k素材を使ったプロセサを製品化するのは,米IBMが世界初である。

 テュレック副社長によれば,「low-k素材を使うことで,動作周波数が同じプロセサに比べて,消費電力を約20%軽減できる」。この技術に加えて,銅配線技術と,高密度化や低消費電力化を実現する「シリコン・オン・インシュレータ(SOI)」技術も採用する。銅配線とSOIは,現行プロセサである「RS64-zM」から採用している。

 IBMは,Regattaの信頼性を高めるための工夫も施している。具体的には,プロセサへの負荷を動的に分散する「インテリジェント・リソース・ディレクタ(IRD)」という機能を搭載する。IRDは同社のメインフレーム「e server zSeries」で実現している機能を移植したもの。Regattaは32個のプロセサをいくつかの区画に分割し,IRD機能を使って各区画間で負荷を動的に割り振ることができる。他社のUNIXサーバーが実現している負荷分散機能は,人手で負荷の配分を変更する必要がある。

 IBMがRegattaにIRD機能を移植したのは,同社が進めている次世代サーバー開発計画「eLiza(イライザ)計画」の一環である。eLiza計画の目的は,「あたかも生き物のように,自ら故障個所を診断して修復したり,負荷の急増に対して自動的にシステム資源を割り当てるといった,セルフ・マネージング・サーバーを実現すること」(テュレック副社長)にある。

 IBMはeLiza計画における要素技術を,まずメインフレーム向けに開発して,他のサーバーに順次展開していく,という方針をとっている。RegattaへのIRD機能の移植は,その第一弾である。テュレック副社長は,「eLiza計画を実現するための重要なステップだ」と話す。

(玉置 亮太)

メーカー名 米IBM 米サン・マイクロシステムズ 米ヒューレット・パッカード
製品名 Regatta(開発コード名) Sun Enterprise 10000 hp 9000 superdome
搭載プロセサ
(動作周波数)
POWER4
(約1.1GHz)
Ultra SPARC II
(466MHz)
PA-8600
(552MHz)
最大プロセサ数 32 64 64
処理性能 約39万7000tpmC(日経コンピュータ推定) 15万6873tpmC※ 19万7024tpmC
出荷時期 2001年末 1997年3月 2000年11月
図●米IBMが今年末に出荷するUNIXサーバー「e server pSeries」最上位機の概要
市場で競合する米サン・マイクロシステムズと米ヒューレット・パッカードの製品の仕様も参考に示した
※動作周波数400MHzのUltra SPARC IIによる値