コンパックは,3年前に買収した旧DECの独自プロセサ「Alpha」の開発中止を決断した。今後,サーバー機には,インテルの「IA-64」を全面採用する。ただしユーザー離れを防ぐため,Alphaプロセサの強化も当面続けざるを得ない。ここ3年間の迷走のツケは,かなり高くつきそうだ。
米コンパックコンピュータは2003年いっぱいでAlphaの新規開発を打ち切る。2004年以降は米インテルのIA-64を全面採用,UNIXサーバー機「Alpha Server」や超並列機「Himalaya」の将来製品に,IA-64を搭載する(表)。
これらの機種用OS(Tru64 UNIXとOpenVMS,NonStop Kernel)もIA-64の将来版に移植し,既存アプリケーションを再コンパイルすれば,IA-64搭載機上で動くようにする。コンパックはAlpha関連の技術者にインテルへの段階的な移籍を促し,一連の移行作業をインテルと協力して進める。
コンパックは,Alphaの設計・開発に年間3億ドル程度を投じていたようだ。「今後は,この資金を別の戦略分野に振り向けることが可能になる」(日本法人の市原隆保エンタープライズ製品本部長)とコンパックは説明する。
ただし,それが可能になるのは,かなり先の話だ。IA-64への移行が完全に終わるまで,コンパックは現行のハード/ソフト製品を強化し続けなければならないからだ。この7月10日には,64ビット・プロセサとしては初めて1GHz超で動く最新版Alphaを搭載するサーバー機を発表した。同社はAlpha搭載機の製造・販売は少なくとも2008年まで,サポートは2013年まで継続する。
開発元のDECがコンパックに買収されて以降の3年間,Alphaを巡る戦略は迷走を続けてきた。コンパックは当初,Alphaの勢力拡大を目論んだが,その後,方針を180度転換し,科学技術演算などの特定用途向けに特化することにした。Windows NT/2000に対する姿勢も揺れ続けた(表)。これでは顧客がAlphaから離れていくのも無理はない。
「IA-64に移行する過程で,これ以上,顧客の信頼を失うわけにはいかない」。そう考えたコンパックは移行期間の長期化を覚悟の上で,早々とIA-64への移行計画を公表した。「このタイミングでIA-64の全面支持を表明すれば,インテルから最大級の支援を得られる」という読みもあったはずだ。
IA-64の最初の製品「Itanium」は今年5月末に量産出荷が始まった。だがソフトウエア面の準備が遅れている上に,競合プロセサに大きな性能差を付けられなかった。このため,立ち上がりは順調とは言えない。インテルは「コンパックの支持は,IA-64にとって強力な援軍になる」(日本法人の佐藤宣行e-マーケティング本部長)と語っている。
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表●「Alphaプロセサ」登場から撤退までの経緯 |