ERPパッケージ・ベンダー大手の独SAPや米ピープルソフトがCRM(顧客関係管理)ソフト市場に本腰を入れ始めた。この6月には相次いで新版を発表。いずれも自社のERPパッケージとの連携を前面に押し出して,米シーベル・システムズをはじめとするCRMソフト専業ベンダーを追撃する。

図●大手ERPパッケージ・ベンダーが提供するCRMソフトのカバー範囲。独SAPと米ピープルソフトがCRMソフト市場に本格参入した。
CRM:顧客関係管理

 欧米ではERPパッケージの需要が一巡して,市場が伸び悩んでいる。それだけにSAPとピープルソフトがCRMソフトにかける期待は大きい。いずれも「ERPに次ぐ第2の柱」と位置づけ,自社のERPパッケージを導入している企業だけでなく,これまで付き合いのなかった企業にも積極的に拡販する。CRMソフトだけを導入した顧客に,その後,ERPパッケージを売り込むのはいうまでもない。

 ERPパッケージ市場でSAPやピープルソフトと競合する米オラクルは,ひと足早く,同様の戦略を打ち出している。オラクルは2000年9月から,ERPパッケージを核に,CRMソフトやSCM(サプライチェーン管理)ソフトを統合した「E-Business Suite 11i」を出荷している。

 SAPとピープルソフトのCRMソフトの売り物も,自社のERPパッケージとの連携機能だ。例えばピープルソフトが米国で6月から出荷を始めた「PeopleSoft 8 CRM」は,同社のERPパッケージ「PeopleSoft 8」のデータベースをそのまま利用できる。すでに基幹系にある顧客データや取引データを流用して営業活動やコールセンター業務の支援システムを構築可能だ。ピープルソフトのクレイグ・コンウェイCEO(最高経営責任者)は,「両製品はアプリケーション開発環境が同じなので,あたかも同一のソフト製品のように密接に連携する」としている。

 PeopleSoft 8 CRMの前身は,ピープルソフトが1999年10月に買収した米バンティブの「Vantive Enterpise」。当然,PeopleSoft 8なしでも動作する。

 一方,SAPの「mySAP CRM」は,欧米で8月から出荷する「バージョン3.0」で,初めて単体で動作するようになった。現行の「mySAP CRM バージョン2.0」は,R/3を導入していないと利用できなかった。独SAPでCRMソフトを担当するベルナルド・サンチェス副社長は,「新版はR/3ユーザー以外も使えるが,最終的にはR/3と組み合わせて使ったほうが,システム導入や運用にかかるコストを削減できる」と主張する。

 mySAP CRM バージョン3.0の機能は豊富だ。営業活動やコールセンター業務の支援機能だけでなく,顧客データの分析機能や企業間電子商取引の支援機能まで備えている。ピープルソフトのPeopleSoft 8 CRMは,営業活動やコールセンター業務の支援機能に的を絞った製品だが,同社の別製品と組み合わせれば,mySAP CRMとほぼ同じことができる([拡大表示])。

 PeopleSoft 8 CRMは今年8月ごろ,mySAP CRM バージョン3.0は今年11月に国内出荷が始まる。

(戸川 尚樹)