NEC,富士通などパソコン関連の大手メーカー6社は6月,業界団体ロゼッタネットジャパンが定めた標準仕様による部品取引に乗り出した。各社は同仕様に基づく企業間電子商取引(BtoB)を順次拡大する。生産規模で勝る海外勢と競争するには,業界を貫くサプライチェーンの構築が不可欠と判断した。

 ロゼッタネットジャパンが策定したBtoBの標準仕様「ロゼッタネット標準」を正式採用するのは,NEC,インテル,ソニー,東芝,富士通,日立製作所のパソコン関連メーカー6社()。まずは6社間の部品取引に,ロゼッタネット標準に沿った形式で受発注データをやり取りする。見積もりや納品といった,取引時のルール(ビジネス・プロセス)もロゼッタネット標準に合わせる。

 各社は,6社以外のメーカーにもロゼッタネット標準に沿った電子商取引を呼びかける。年内には,大手を中心に60社程度が,ロゼッタネット標準によるパソコン用部品の電子商取引を開始する見通しだ。ロゼッタネットジャパンは,実取引を通してロゼッタネット標準を利用する際の注意点を洗い出し,ガイドラインとしてまとめることも計画している。

 ロゼッタネット標準に対する,パソコン・メーカー各社の期待は大きい。「商品サイクルの短縮と,製品価格の下落が進む中,メーカー各社にとってサプライチェーンのいっそうの効率化が急務だ。そのためには,業界を挙げてロゼッタネット標準を採用することが欠かせない」(ソニーの生産子会社,ソニーイーエムシーエスの田谷善宏取締役)と言い切る声もあるほどだ。

 国内メーカーが,生産台数で大きく上回る海外勢,なかでも業界首位の米デルコンピュータと競合するには,標準仕様に基づいて,業界全体を貫くサプライチェーンを構築するしか手がない。パソコン需要の減退を好機ととらえたデルは,顧客から有力部品メーカーを結ぶ効率的なサプライチェーンを武器に,低価格攻勢を仕かけている。

 ロゼッタネット標準の導入は,業界横断のサプライチェーンを築く第一歩だ。ロゼッタネット標準はパソコン用の部品番号を一意に定義しているので,どの企業と取引する場合でも同じ部品番号を使える。社内の受発注システムでロゼッタネット標準のデータを交換できるようにしておけば,さまざまな取引先からの要求に応じてシステムを変更しなくてもすむ。ロゼッタネット標準は,データの表現形式にXMLを使っているので,やり取りするデータの種類が変更されたり,交換する相手が変わっても,迅速に対応できる。

 NECや富士通をはじめとするパソコン・メーカーは,それぞれ独自の部品番号をこれまで使っていた。メーカーによって,同じ部品に異なる部品番号が付けられていたり,同じ部品番号が異なる部品を意味することがよくあった。この独自部品番号がネックとなって,パソコン・メーカー各社は,部品の調達先を柔軟に変更することが難しかった。部品メーカーにとっても,各社独自の部品番号に個別対応する手間がかかった。こうしたことが効率的なサプライチェーンの構築を阻んでいた。

(高下 義弘)

企業名 取引の形態(取引する商品) 今後の意向
NEC 買い手(マイクロプロセサなどのパソコン用部品) すでに自社の電子調達システム「ペガサス」をロゼッタネット標準で取引できるように改良済み
インテル 売り手(パソコン用のマイクロプロセサ) すでにソニーとの取引件数の3 割はロゼッタネット標準を適用しており,他のパソコン・メーカーについても適用を進めていく
ソニー 買い手(マイクロプロセサなどのパソコン用部品) 日本,台湾,韓国の主要部品メーカーとの受発注にロゼッタネット標準を順次適用していく
東芝 売り手(半導体) すでに運用している受発注システムを改良し,年内にロゼッタネット標準で取引できるようにする
日立製作所 売り手(半導体),買い手(マイクロプロセサなどのパソコン用部品) ロゼッタネット標準を適用した取引を今秋にも本格的に開始する予定
富士通 売り手(ハードディスク),買い手(マイクロプロセサやコンデンサなどのパソコン用部品) 今秋にも本格的にロゼッタネット標準を適用した取引を開始する予定。ソニーとのハードディスクの取引に適用する方針
表●今年後半からロゼッタネット標準を実際の取引に導入する大手6社の取引内容