IBMがオープン・システム向けソフトウエアの強化策を相次いで打ち出した。4月23日にLinuxとの新和性を高めたAIXの新版を発表。続く24日には,データベース・ソフトの老舗である米インフォミックスの買収計画を明らかにした。サンーオラクル連合の追撃を目指す。

 「当社のUNIXサーバーは市場で最強のラインアップ。ハードウエアは他社製品にまったくひけはとらない。今後は当社の弱点であるパートナー開拓を進めて売り上げを拡大したい」。日本IBMのサーバー事業を統括する小出伸一システム製品事業部長がこう語るように,IBM製UNIXサーバーの泣き所はソフトウエアだった。

 例えば,データベース・ソフトのDB2 UDBは,他社製UNIXにも移植されているが,いまだに“IBM色”を払拭できずにいる。その間に,サン・マイクロシステムズのUNIXサーバーは,業界標準のOracleとの相性の良さを武器に,高いシェアを確保した。サンのUNIXであるSolarisが,開発者の数でIBMのAIXを大きく引き離しているのは衆目の一致するところだ。

表●AIX 5Lの主な新機能。Linuxへの親和性を高めた
 こうした状況を改善するため,IBMは,オープン・システム向けソフトウエアの強化策を矢継ぎ早に打ち出した。その第1弾は,AIXの新版「AIX 5L」である。AIX 5Lの最大の特徴は,Linuxとの親和性の高さ([拡大表示])。LinuxのAPIを装備しているため,インテル・プロセサ用Linux向けに開発されたアプリケーションは,再コンパイルするだけでAIX 5L上で動く。Linux用デスクトップ環境として人気のある「GNOME」と「KDE」も,AIX 5Lはサポートする。

 日本IBMの小出事業部長は,「Linuxの開発者は全世界で約750万人おり,さまざまな新しいアプリケーションが開発されている。AIX 5Lを利用すれば,これらのLinux向けアプリケーションを,高い信頼性と処理性能を備えるIBMのUNIXサーバー上で動かすことができる。これは企業ユーザーにとって大きな魅力だ」と力説する。

 さらにIBMは,AIX 5Lの外販にも乗り出す。AIX 5Lは,IBMのUNIXサーバー「e server pSeries(旧RS/6000)」が搭載するPOWERプロセサに加え,インテルのIA-64プロセサ上でも動作するからだ。今年半ば以降にIA-64プロセサを搭載したサーバー機が各メーカーから登場するのを待って,IBMは各社にAIX 5Lの採用を呼びかける。

 一方,米インフォミックス・ソフトウェアの買収は,オラクルとの厳しい競合が続くデータベース・ソフト市場でのシェア拡大が狙い。IBMとインフォミックスは,インフォミックスのデータベース・ソフト事業をIBMが現金10億ドルで買収することで合意した。

 IBMはこの買収で,インフォミックスの既存顧客の取り込みを狙う。インフォミックスの大規模システム向け製品「Informix Dynamic Server」と,データ・ウエアハウス向け製品「Informix Red Brick Warehouse」を,IBMブランドで販売する。今後,インフォミックスの製品をIBM製品にどう統合するかは,まだ明らかにしていない。

 ただし,一連のIBMの強化策が,狙い通りの効果を上げるかどうかは不透明だ。LinuxアプリケーションをAIX 5Lに簡単に移植できるとなれば,ソフト・ベンダーがAIX向け製品の開発を中止することもあり得る。

 インフォミックスの買収についても,今後のパートナ戦略が難しい。日本市場では,これまでインフォミックス製品を販売していたNECや富士通などが,買収をきっかけに離れていくことも考えられる。

(中村 建助)