携帯情報端末(PDA)のメーカーが一斉に,ビジネス市場を狙った機能強化に注力し始めた。企業ユーザーが業務システムの端末として,iモード携帯電話よりも画面が大きくデータ入力が簡単なPDAを有望視し始めたからだ。複数の有力メーカーが,業務利用に有効なパケット通信機能を内蔵する製品を投入。サーバーとの連携ソフトも充実してきた。Java実行環境の搭載については,メーカーによって態度が分かれている。

図1●カシオ計算機やパーム コンピューティングなどが携帯情報端末(PDA)に搭載するDoPaの通信機能。
プッシュ型のデータ通信が可能,課金が従量制なので低コスト,といった利点がある

 携帯情報端末(PDA)のメーカーにとって,2001年は「ビジネス市場進出の元年」になりそうだ。「今年はビジネス市場に本格的に打って出る。2月に日本で開催した開発者向けイベントでも,この方針をパートナに正式表明した」(パーム コンピューティング=東京都千代田区=クレイグ・ウィル代表取締役)。「業務利用を想定した,ペン入力方式の新しいPDAを開発中。早ければ今秋にも市場に投入する」(NECソリューションズの成澤祥治モバイルiソリューション事業部グループマネージャー)。

 各社が業務システムの端末に向くPDAの製品化を急ぐのは,確かな需要の手ごたえを感じているからだ。パーム コンピューティングの青山満男営業部長は,「2000年後半以降,『当社の情報システムの端末として使えないか』という企業からの問い合わせが目に見えて増えた」と語る。コンパックコンピュータ(東京都品川区)の湯浅茂インターネットプロダクト部長も,「『業務システムの端末として使うなら,iモード携帯電話よりも画面が大きく,データ入力が簡単な製品が必要だ』という声が数多く寄せられるようになってきた」と話す。

パケット通信機能の内蔵が主流に

 主要メーカーが,PDAの業務利用を促進するために最も重視しているのは,通信機能の強化である。なかでも,パケット通信の機能をPDA本体に組み込む動きが活発になってきた(図1[拡大表示])。営業担当者などが訪問先から,不定期に自社のデータベースにアクセスする,といった用途を想定している。

 カシオ計算機は,NTTドコモのパケット通信サービス「DoPa」の通信機能を内蔵する「CASSIOPEIA E-707-S」を,他社に先駆けて今年3月に出荷した。パームは「Palm」の新モデルとして,DoPaの通信機能を内蔵する製品を今夏までに投入する。

 PDA大手のシャープも,DoPaの通信機能を内蔵する「Zaurus」の製品化を検討し始めた。「ビジネス市場を開拓するうえで,通信機能の内蔵は非常に重要だ。利用する通信サービスとしてはDoPaが最有力。市場のニーズを見ながら,製品化の時期を決めたい」(シャープの鈴木隆モバイルシステム事業部商品企画部長)。同社は昨年12月に主力モデル「Zaurus MI-E1」を出荷したが,DoPaの採用はその後継モデルになると見られる。

(森 永輔)