インターネットの情報提供サービスを音声で利用できるようにする基盤サービス「音声ポータル」が,いよいよ日本にも登場する。利用者は携帯電話などから,音声を使って情報検索などの操作を行い,その結果を音声で聞いたり画面で確認できる。先陣を切って日本テレコムが,国内初の音声ポータルを7月に立ち上げる。音声ポータル用コンテンツの記述言語「VoiceXML」の普及団体を設立するなど,大手インテグレータも市場開拓に動き出した。

 「Webサイトを立ち上げている企業は極めて多いが,利用者のことを考えて応答時間を短くする努力をしている企業は少ない」。こう話すのは,日商エレクトロニクスの宗尾司インターネット事業推進部長だ。同社は2000年12月,企業が運営しているWebサイトの応答時間を定期的に測定し,その分析結果を電子メールなどで報告するサービスを開始した。

 米国ではすでに20社以上が「音声ポータル」サービスを提供している。これは,電話機から音声による操作でインターネットのさまざまな情報提供サービスを利用できるようにするもの。当初はベンチャー企業ばかりだったが,2000年後半から米アメリカ・オンライン(AOL)や米ヤフーといった有力ネット企業が相次いで参入した。

 日本でもいよいよ7月1日から,日本テレコムが国内初となる音声ポータルの試験サービスを開始する。これに続いて2001年内には,複数の通信事業者やインターネット・サービス・プロバイダなどが同様のサービスを始めそうだ。音声ポータル向けのシステム構築需要を狙って,インフォコム(東京都文京区),沖電気工業,オムロン,日本アイ・ビー・エム,日立製作所といった,音声認識や音声合成の製品を販売しているシステム・インテグレータも動き出した。

 音声ポータルは一般の個人ユーザーだけでなく,企業ユーザーが外出先で利用するサービスとして便利だ。将来は,社員向けポータル・サイト(社内ポータル)を音声で利用できるようにする企業が出てくる可能性もある。

図●音声ポータルの利用イメージ
利用者は音声ポータル・サイトに電話をかけ,音声によってインターネットの情報提供サービスを操作する。利用者から見ると,同サイトが,さまざまな情報提供サービスへの「入口(ポータル)」となる。

目的のサービスを音声で呼び出す

 音声ポータルの利用者は,携帯電話や固定電話を使って音声ポータルの“窓口”となる番号に電話をかけ,情報検索などの操作を声で行う([拡大表示])。音声ポータルは,音声認識や音声合成の機能を持つ音声応答システムを備える。検索結果は音声応答システムが音声で読み上げるか,電話機に付いている液晶画面に文字や画像で表示する。

 音声ポータルの利点は,利用者が一つの窓口からインターネットにつながった多様な情報提供サービスを受けられることと,情報提供会社が個別に音声応答システムを導入しなくてすむことである。これに対して,証券会社の株価照会サービスなど,CTI(コンピュータ電話統合)技術を利用した既存の音声応答サービスでは,情報提供会社があらかじめ用意したサービスしか利用できないし,各社が自ら音声応答システムを導入する必要がある。

 音声ポータルでは,利用したいサービスが分かっている場合は,最初からその名称を発声すればよい。メニュー階層を順番にたどらず,一気に目的のサービスに行き着ける。「音声による検索は簡単なので,パソコンが苦手なユーザーにインターネット利用の道を開く。インターネットを使い慣れたユーザーが,状況に応じてアクセス手段を使い分ける,というニーズもあると考えている」と,日本テレコムの遠藤聡子開発事業本部事業開発部新規事業グループ リーダーは話す。

 これに対して,インターネットを利用できる「iモード」などの携帯電話では,サービスのメニュー階層が深い場合は,目的のサービスにたどりつくまでに時間がかかる。ブックマークに登録すれば所望のサービスを即座に呼び出せるが,そのような使い方をしているユーザーは多くない。

(中村 正弘)