米IBMの新型メインフレーム「e server zSeries 900」の大半は,従来型のメインフレームとは異なる領域で利用されていることが判明した。数十台の他社製UNIXサーバーを1~2台のzSeriesに集約する企業や,超大型LinuxサーバーとしてzSeriesを新規導入する企業が増えているという。

 「オンライン・トランザクション処理(OLTP)を中心とする従来型メインフレームの市場だけを狙うのなら,わざわざzSeriesを開発する必要はなかった」。米IBMでzSeriesの開発・製造・マーケティングを統括するダニエル・コルビー事業部長は,こう断言する。「従来型メインフレームの市場を見限って,IBM互換機事業から撤退した日立製作所や富士通は,もはやライバルではない。今後の敵は,UNIXサーバー大手のサン・マイクロシステムズやヒューレット・パッカード(HP)だ」と続ける。

 米IBMが昨年12月から出荷を始めたzSeriesは,従来型メインフレームS/390の後継機だが,メインフレームOSの「z/OS」に加え,Linuxも稼働する。IBM自身,zSeriesを超大型のLinuxサーバーと位置付けて,ユーザーに売り込んでいる。

 さらに米IBMは,zSeriesをUNIXサーバーのリプレースとして使う提案も積極的にしている。z/OSは64ビット化してあるうえに,UNIX用のAPIを備えているため,UNIX用の64ビット・アプリケーションを簡単に移植できるからだ。

 こうした米IBMの狙いは,今のところ,ユーザーに受け入れられているようだ。コルビー事業部長は,「zSeriesを導入するユーザー企業の大半は,大型LinuxサーバーやUNIX生まれのアプリケーションを動かすためのプラットフォームとして,zSeriesを使っている。これまで出荷したzSeriesの処理能力のほぼ半分が,そうした新しい用途に充てられている」と語る。

 例えば,「北欧最大の電話会社テリアは,サンのUNIXサーバー70台をリプレースして,1台のzSeriesに統合する計画だ。現在,Solaris上で稼働しているアプリケーションはzSeries上のLinuxに移植していく」(コルビー事業部長)という。テリアがIBMメインフレームを導入するのは,これが初めて。このほか,独ドイチェ・テレコムや米モルガン・スタンレー証券もzSeriesを超大型Linuxサーバーとして導入することを決めている。

 このほか「IBMのWebアプリケーション・サーバー・ソフトWebSphereをzSeries上で動かしている企業も多数ある」(コルビー事業部長)。WebSphereは,もともとUNIXサーバー用に開発され,その後,zSeriesに移植された製品である。

 米IBMは,今後も,zSeriesを半年に一度のペースで強化する方針だ。zSeriesの強みである,高い処理能力と可用性をさらに向上させる。コルビー事業部長は,「処理能力や可用性を向上させるために,サンやHPは巨額の投資を続けている。当社のzSeriesも負けるわけにはいかない」と意気込む。

 ハードウエア面では,処理能力を15~20%向上させた製品や,より小型で安値な製品を2002年に投入する。一方,ソフトウエア面では,離れた場所に設置してあるzSeries同士を,ネットワークを介してクラスタ接続する機能をより強化する。さらに,zSeriesに移植されている独SAPや米シーベル・システムズなどの業務パッケージがいっそう高速で動作するようにしていく。

(森 永輔)