インターネットを使った取引で,買い手には「購買コストの削減」,売り手には「顧客開拓の効率化」といったメリットが期待されるマーケットプレイス。しかし,立ち上がった国産マーケットプレイスで計画通りの実績を上げているものは少ない。海外の有力マーケットプレイスに対する競争力にも不安がある。各マーケットプレイスはこれらの課題を克服するため,購買力のある大企業の勧誘や決済機能の強化など,さまざまな対策を打ち出し始めた。

 2000年半ば以降,日本市場でも相次いでマーケットプレイスが産声を上げた。多数の売り手企業と買い手企業がインターネット経由で商品を取引する,いわゆる「n対n」型の本格的なマーケットプレイスも,いよいよサービスが始まった。鋼材など重厚長大型の商品を取引するものから,企業内で不要になったノベルティ・グッズなどの“余剰品”を扱うものまで,分野もさまざまだ。

 これらの国産マーケットプレイスは,売り手と買い手それぞれの大きな期待を背負って,サービスを開始した。ところが,当初の思惑通りには取引が伸びていないのが現状だ(表1)。

 鋼材を扱うマーケットプレイス「鋼材ドットコム」は,「現在の取引高は月間1万トン程度で,十分とは言えない。本来なら月間5万トンは欲しいところだ。2003年までには,コスト回収の目安となる年間300万トン(月間25万トン)程度に伸ばしたい」(運営会社である鋼材ドットコム=東京都中央区=の吉江純彦社長)という。

 配送会社と荷主がトラックの荷台の空きスペースを取引するマーケットプレイス「SpaceTrader」も,「取引額は公開できないが,まだ計画の半分程度しか達成できていない」(SpaceTraderを運営するイー・トレックス=東京都中央区=の松浦義幹マーケティング部ディレクター)。

(森 永輔)

マーケット
プレイスの名称
鋼材
ドットコム
BBELE.
COM
.com
Co-Buy
eBuy
Sell
e-zaiko.
com
Space
Trader
URL http:// www.
kouzai. com/
http:// www.
bbele. com/
http://www.
market
crosssite.
net/
http://www.
ebuysell.
co.jp/
http://www.
e-zaiko.
com/
http://www.
e-trex. co.jp/
運営企業 鋼材ドットコム ビービーエレ・ドットコム NTT コミュニケーションズ イーバイセル いい在庫ドットコム イー・トレックス
取扱商品 鋼材 半導体,電子部品 事務用品などの間接物品 電気通信工事用の部材 余剰品* トラックの荷台の空きスペース
参加企業数
(売り手と買い手の内訳)
約300社
(売り手は3社,残りは買い手)
約2700社
(売り手と買い手の区別はない)
約140社 約30社
(内訳は非公開)
約750社
(売り手と買い手の区別はない)
約100社
(売り手は約70社,買い手は全社)
取引額 月額5億円
(取引高は月間1万トン)
月間1億円 非公開 非公開 非公開 非公開
サービス
開始時期
2000年6月 1999年2月 2000年7月 2000年10月 2000年12月 2000年11月
現時点における運営企業の自己評価 取引高に不満。「2003年6月に年間300万トン」という目標を達成するためには,現時点で月間5万トンが必要と見込んでいる 参加企業数は予想以上だが,取扱商品の品ぞろえに不満。取引の約7割は,買い手の求めに応じて急きょ調達した商品である 参加企業数はほぼ満足だが,取引額に不満 参加企業数に不満。2000年末までに130社を集める計画だったが,既存の流通形態が制約となって参加に踏み切れない企業が多かった 参加企業数,取引額ともに計画通り 取引額に不満。計画の半分にしか達していない
表1●すでにサービスを提供している主な国産マーケットプレイスの参加企業数と取引額。
計画通りの実績を上げているマーケットプレイスは少ない。
* キャンペーン終了後に残ったノベルティ・グッズなど,売り手企業にとっては不要だが,他の企業にとっては有用な商品