Linuxの最新版「カーネル2.4」を採用したLinuxディストリビューションが,早くも登場した。ただし,大手Linuxディストリビュータ(販売ベンダー)の足並みはそろっていない。カーネル2.4は安定性に不安があると見て,従来カーネルに2.4の新機能を取り込んだ製品を投入するベンダーもある。

 2001年1月5日に公開されたLinuxカーネル2.4の最大の売り物は,マルチプロセサ構成での性能を向上させたこと。8プロセサ構成まで,プロセサ数に比例して,処理性能が向上するように改善した。従来のカーネル2.2は,搭載プロセサ数を増やしても,4プロセサ程度までしか直線的に性能が向上しなかった。

 このほかにも,カーネル2.4では,大規模システムへの適用を意識した強化が施されている。(1)使用できる最大物理メモリー容量を2Gバイトから4Gバイトに拡張したほか,(2)2Gバイトを超える大きさのファイルを処理できるようになった。(3)複数のハードディスク・ドライブを単一ディスクとして扱う「LVM(ロジカル・ボリューム管理)」機能や,(4)アプリケーションがファイル・システムを介さずにハードディスクを直接読み書きする「raw(ロウ)デバイス」機能,(5)ファイルの更新履歴を記録する「ジャーナリング・ファイル・システム」といった,商用UNIXと同等の機能もカーネル2.4には盛り込まれている。

 主要Linuxディストリビュータ4社のなかで,カーネル2.4の採用を早々と打ち出したのは,独SuSE Linuxだ()。カーネル2.4を採用したLinuxディストリビューション「SuSE Linux 7.1」を2月12日に出荷する。デスクトップ版の「SuSE Linux 7.1 Personal」と,サーバー版の「SuSE Linux 7.1 Professional」がある。ただし,日本語版が提供される見込みは今のところない。

 これに続いて米レッドハットが,カーネル2.4搭載製品を4月半ばに出荷する計画だ。1月末からベータ版を公開した。こちらは日本語版をレッドハット日本法人が4月下旬にも出荷する計画で,2月上旬からベータ版を公開する。

 これに対して米ターボリナックスは,カーネル2.4の採用に慎重だ。採用製品の出荷時期は,「デスクトップ版が2001年6月まで,サーバー版が同第3四半期(7~9月)」としている。日本語版も同様である。その代わり,ターボリナックスは従来版のカーネル2.2.18に,2.4の新機能を取り込んだLinuxディストリビューションを2月16日から先行投入する。サーバー版で,価格は6万9800円だ。「カーネル2.4は安定性などの点で,まだ実用に耐えるレベルに達していない。だが2.4の新機能を使いたいというユーザーも多いので,2.4の主要な新機能を2.2.18に移植して製品化することにした」と,ターボリナックス ジャパンの小玉博和プロダクト・マーケティング ディレクタは説明する。

 ただし,この製品は,2.4の目玉である8プロセサまでのスケーラビリティは実現していない。「4プロセサ以上のパソコン・サーバーでLinuxを使いたいという需要は,現時点ではあまりない」(同)と判断した。

 米カルデラシステムズは,カーネル2.4を採用したサーバー版を2001年第2四半期(4~6月)に出荷する。日本語版は,英語版出荷から2カ月以内に提供する予定だ。

 このほかでは,日本オラクルの子会社であるミラクルリナックスが,カーネル2.4を採用した大規模サーバー向けLinuxディストリビューションを,2001年第2四半期(4~6月)にも発売する計画である。

(中村 正弘)

社名 デスクトップ版 サーバー版
独SuSE Linux 2001年2月12日 2001年2月12日
米レッドハット 2001年4月半ば 2001年4月半ば
米カルデラシステムズ 未定 2001年第2四半期
米ターボリナックス 2001年前半 2001年第3四半期
表●主要LinuxディストリビュータのLinuxカーネル2.4採用製品の出荷時期(英語版の場合)