米マイクロソフトをはじめとして,米IBMや米オラクルなど米国の大手ITベンダーが,いっせいに「Webサービス」という新ビジョン(構想)を打ち出した。Webサービスとは,一言で言えば「あらゆるアプリケーションを,Web経由のサービスとして提供する」ものだ。ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)の発展形とも言えるが,アプリケーションの開発手法を含めて情報システムのあり方を根本から変革する可能性を秘めている。

 「すべてのアプリケーションをWeb上へ」・・・。米国の大手IT(情報技術)ベンダーが,いっせいに次世代の情報ネットワーク構想を打ち出した(表1)。各社の構想の狙いは共通している。アプリケーションを,Web経由でASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)形式の“サービス”として提供することだ。

 ただし単なるASPサービスとは,一味も二味も違う。各社の構想では「Web上に存在するさまざまなアプリケーションを利用して,新しいアプリケーションを構築できるようにする」(米マイクロソフトで企業向け製品を担当するジェフ・レイクス グループ副社長)ことをうたっている。システムの利用形態のみならず,開発(実現)形態も根本から変えようとしているのだ。ASPサービスと区別する意味で,各社は新たな構想を具現化したサービスを「Webサービス」と呼んでいる。

Webサービスの発表ラッシュ

 Webサービスの実現に向け最も意欲を燃やしているのが,米マイクロソフトである。そのための技術体系「Microsoft.NET」を2000年6月に発表した同社は,同年12月にWebサービス開発ツール「Visual Studio.NET」のベータ版を発表・提供開始するなど,着々とWebサービス向け製品の充実に努めている。2001年後半にはVisual Studio.NETの製品版をリリースする計画だ。

 米オラクルも負けてはいない。同社は2000年12月,主力データベース製品「Oracle9i」の発表に合わせて,Webサービスに向けた技術体系「Oracle 9i Dynamic Services」を発表した。通称を,マイクロソフトの「.NET」になぞらえて「.NOW」と呼ぶなど,マイクロソフトへの対抗意識を隠さない。

 他の大手ITベンダーも,着々とWebサービス実現の準備を進めている。あまり目立たなかったが,米ヒューレット・パッカードはマイクロソフトの発表より1年以上も前の1999年3月に「E-services」を発表済み。米IBMも,ずばり「Webサービス・アーキテクチャ」の名称で,同様の技術体系を開発中だ。さらに米サン・マイクロシステムズも「Brazil project」という社内名称で,JavaをベースにしたWebサービス技術体系を開発している。

(玉置 亮太)

表1●米大手ITベンダーのWebサービス技術体系の概要
各社とも2000年から2001年にかけて主要なミドルウエア群をそろえ,Webサービスの基盤作りを急ぐ