米IBMの長期的なサーバー強化計画が見えてきた。メインフレームからインテル・プロセサ搭載サーバーに至る各種のサーバーを接続し,論理的に一つのシステムとして動かす。各サーバーには,Linuxを搭載。Linux用ソフトの特性に応じて,実行するサーバーをシステムが自動選択できるようにする。

図●米IBMが5~10年後の実現を目指して開発を進めている「フレキシブル・サーバー」の概念。4種類のアーキテクチャのサーバーを相互接続し,ソフトの特性に応じて,稼働するサーバーを相互接続機構が自動的に決定する仕組みになるとみられる
 米IBMは,この構想を「フレキシブル・サーバー」と呼んでおり,5~10年先の実現を目指している。「インターネット・ビジネスに取り組むユーザーがサーバー・アーキテクチャの違いや,ハード資源の容量を意識しないですむようにすることが最終目標」と,米IBMのサーバー部門でマーケティングを担当するスーザン・ホイットニー副社長は説明する。

 目標実現のカギを握るのが,Linuxである。メインフレーム(e server zSeries,旧S/390),UNIXサーバー(同pSeries,旧RS/6000),オフコン(同iSeries,旧AS/400),インテル・プロセサ搭載サーバー(同xSeries,旧Netfinityなど)の4種類のアーキテクチャのサーバーで,Linuxを稼働させる。これにより「実行するソフトの特性に応じて,最適なサーバー・アーキテクチャをシステムが自動選択する」(ホイットニー副社長)道が開ける。例えば,可用性を重視するLinuxソフトの実行にはzSeriesを使い,処理速度重視のソフトはpSeriesで動かす,といったことが可能になる。

 フレキシブル・サーバーは,4種類のアーキテクチャのサーバーを超高速の相互接続機構でつなぐ。こうすることで,「システムが各サーバーの負荷を計測して,メモリーやディスク装置などのハード資源の割り当てを動的に変更できるようになる」(ホイットニー副社長)。

 フレキシブル・サーバーが実現すれば,IBMのサーバー製品群は名実ともに「統合されたサーバー」に生まれ変わる。IBMは2000年10月,全サーバー製品の名称を「e server」に変更したが,現状では単なるブランドの統一に過ぎない。既存顧客の保護のため,4種類あるアーキテクチャを保持し続けなければならないIBMにとって,サーバー製品群の統合は,避けては通れない課題だった。

 壮大な構想であるため,フレキシブル・サーバーの実現には,今後,開発しなければならない要素技術がたくさんある。例えば,サーバー間で,メモリーやディスク装置を動的に割り当てるためには,現在のものよりも格段に高速な相互接続機構が欠かせない。ソフトの特性に応じて,処理を割り振る機能も実装しなければならない。もちろん4種類のアーキテクチャのサーバーすべてが,動的にプロセサやメモリーを増設できる必要もある。

 米IBMは,これらの要素技術をまずはメインフレームのzSeries向けに開発・実装し,順次,他のサーバーに展開する方針である。

(森 永輔)