米サン・マイクロシステムズは米国時間の9月27日,次期主力プロセサ「UltraSPARC-III」を正式発表した。インターネット・ビジネス用サーバーへの搭載を前提に,プロセサの処理性能と信頼性を向上させた。サンは今後1年以内に,サーバー機のプロセサをすべてUltra SPARC-IIIに切り替える。

表●米サン・マイクロシステムズの次期主力プロセサUltraSPARC-IIIとインテルのItaniumの比較

 UltraSPARC-IIIは,サンにとって,待望の新プロセサである([拡大表示],写真[拡大表示])。現行の主力プロセサUltraSPARC-IIはデビュー以来,4年弱たち,性能競争でインテルのPentiumIII Xeon,IBMのRS64III,ヒューレット・パッカードのPA-8600といった競合製品に大きく遅れをとっていたからだ。

 サンはUltraSPARC-IIIの投入によって,競合製品との差を一気に縮めたい考えだ。しかし,プロセサ単体の性能では,UltraSPARC-IIIは競合製品にようやく追いついたレベルに過ぎない。

 UltraSPARC-IIIの特徴は,プロセサ単体の性能ではなく,128個以上のプロセサを搭載する大型SMP(対称型マルチプロセサ)機を実現できる拡張性にある。「インターネット・ビジネスの膨大なトランザクションを処理するためには,ハードウエアやソフトウエアを再設計せずに処理性能を向上できる拡張性が必要になる」(サンのエド・ザンダー社長)。

写真●米サン・マイクロシステムズのUltra SPARC-IIIの外観

 拡張性を高めるため,UltraSPARC-IIIは各種のバスを徹底的に高速化した。例えばマルチプロセサ構成時にプロセサ間の同期に使うアドレス・バスは9.6 GB/秒の転送能力を持つ。プロセサと主記憶の間のデータ・バスのデータ転送速度も最高3.2GB/秒と高速だ。いずれのバスの性能も,競合製品の1.5~2倍に達している。

 UltraSPARC-IIIにシステム・レベルの信頼性を向上する機能を装備したのも,インターネット・ビジネスへの適用を考えたからである。具体的には,システム・バスが正常に動作しているかどうかをプロセサが確認するための専用バスを装備した。これによりプロセサとシステム・バスの間のデータ・バスを利用中でも,システム・バスのエラーを発見できるようになった。

 こうした特徴をもって,サンは「Ultra SPARC-IIIは,インターネット・ビジネスのために設計された“ドット・コム・プロセサ”」(ザンダー社長)と称している。

 サンはまず,2000年末に出荷するローエンド・サーバーの新機種「Sun Fire 280R」にUltraSPARC-IIIを搭載する。その後,順次ミッドレンジ・サーバーやハイエンド・サーバーのプロセサもUltraSPARC-IIIに切り替えていく。「1年以内にはすべてのサーバー機にUltra SPARC-IIIを搭載する」(ザンダー社長)という。

(星野 友彦)