省電力技術で注目を集める米トランスメタの新型プロセサ「Crusoe(クルーソー)」を搭載したノート・パソコンが,いよいよ日本市場に姿を現した。ソニーと富士通が相次いでA5ファイル・サイズ機などを出荷。日立製作所はB5ファイル・サイズのノート機に加え,インターネット専用端末の試作機を公開した。メーカー各社は,インテル系プロセサ搭載機に比べ約2倍のバッテリ駆動時間を達成。「処理性能にも問題はない」と太鼓判を押す。

 米トランスメタの新型プロセサ「Crusoe」を搭載したノート・パソコンで先陣を切ったのはソニーだ。9月8日に世界初のCrusoe搭載機を発表した。続いて富士通が9月25日に2製品を発表。日立製作所は9月26~27日に,Crusoeを搭載した試作機2種を公開した。3社はこれらの製品を10~11月に出荷する。

 各社がノート・パソコンに採用したCrusoeは,2次キャッシュ・メモリーが512Kバイトの「TM5600」と,256Kバイトの「TM5400」。動作周波数は,TM5600が最大800MHz,TM5400が最大700MHzである。

まずは個人向けの製品から投入

表1●10~11月に相次いで出荷される,Crusoeを搭載したノート・パソコン
 いずれもOSはWindows Me。日立の製品は試作機で,Windows MeのほかにWindows98第2版も提供される。VAIO PCG-C1VJ/BPとFMV-BIBLO LOOX Tシリーズには,マイクロソフトのオフィス・スイート「Office2000 Personal」がプリインストールされる

 ソニーと富士通は,個人ユーザー向けの機種にCrusoeを採用した。

 ソニーは,小型デジタル・カメラを内蔵するA5ファイル・サイズのノート・パソコン「VAIO C1」シリーズの新機種「PCG-C1VJ」に,600MHz動作のTM5600を搭載した(写真1)。「小型の機種ほどバッテリ寿命を長くしてほしいという要望が強い。C1はVAIOシリーズの最小機種であり,Crusoeに適していた」(インフォメーションテクノロジーカンパニー モーバイルプロダクツ3部設計1課の酒井貫也氏)。

 これに対して富士通は,PHS「H"(エッジ)」の無線通信機能を内蔵する新しいノート・パソコン「FMV-BIBLO LOOX(ルークス)」シリーズの全機種にCrusoeを採用した。B5サイズで,DVD-ROMドライブ内蔵の「LOOX T」シリーズ(写真2)は533MHz動作のTM5600を搭載。A5ファイル・サイズで,DVD-ROMドライブを内蔵しない「LOOX S」は533MHz動作のTM 5400を搭載する。「保守的な企業ユーザーが,Crusoeを受け入れてくれるかどうか疑問だったので,まずは個人向けの製品に使うことにした」(久保毅モバイルPC事業部第二技術部プロジェクト課長)。

 両社とは対照的に,日立は企業ユーザー向けのノート・パソコン「FLORA 220」シリーズの次期機種にCrusoeを採用する考えだ。大きさはB5ファイル・サイズである(写真3左)。「ビジネス・ユーザーのほうがバッテリ寿命に対する要求は厳しい。インテル系プロセサを搭載した従来機種では,多くの機能を詰め込んだ結果,バッテリ寿命が短いという不満がユーザーにあった。Crusoeを搭載すれば,この問題を解決できる」(インターネットプラットフォーム事業部PCシステム本部モバイルPC開発部の窪田一実主任技師)。採用するのは533MHz動作のTM5400だが,「今後は,TM5600搭載機も出していく」(同)。  (中村 正弘)