米トランスメタが開発した新型プロセサ「Crusoe(クルーソー)」を搭載したノート・パソコンが,いよいよ日本市場に登場する。従来よりもバッテリ駆動時間が長いことが特徴。9月8日に製品発表したソニーを皮切りに,富士通,日立製作所,NECなどが年内にCrusoe搭載機を投入する。

写真●ソニーのCrusoe搭載機「バイオC1」。B5ハーフ・サイズのサブノート・パソコンで,ディスプレイは8.9型(1024×480ドット)TFTカラー液晶,重量は約980g

 ソニーは,小型デジタル・カメラを内蔵するB5ハーフ・サイズの個人向けサブノート・パソコン「バイオC1」シリーズの新機種「PCG-C1VJ」にCrusoeを採用した(写真[拡大表示])。国内向けでCrusoeを搭載した製品は,これが最初である。

 PCG-C1VJは,Crusoeシリーズの最上位プロセサ「TM5600」を採用した。512Kバイトの2次キャッシュ・メモリーを内蔵し,動作周波数は600 MHz。OSは9月23日に発売された「Windows Millennium Edition(Me)」である。

 ソニーによれば,Crusoe採用によってバッテリ駆動時間は2倍以上に延びた。新機種は,従来と同じ容量の標準バッテリで2.5~5.5時間,別売りの大容量バッテリ・パックを使えば8~20時間の連続稼働が可能という。従来機種(PCG-C1XG)では,それぞれ1.5~2.5時間と6~8時間だった。これらはすべて省電力モードにおける値である。

 ソニーはCrusoeを搭載したバイオC1を10月7日から発売する予定。市場想定価格はCD-ROM添付モデルが約23万円,添付しないモデルが約19万円の見込み。

 ソニーに続いて富士通も,10月中旬にCrusoe搭載機を投入する見通しである。やはりB5ハーフ・サイズのサブノート機に採用する。OSはWindows Me。DVD-ROM装置を添付したモデルも用意する。9月下旬に正式発表する。日立製作所は11月に,Crusoe搭載のB5サイズのノート・パソコンを出荷する。ディスプレイが10.4型と12.1型の機種を用意する。NECも同時期にCrusoe搭載のノート機を投入する可能性が高い。

 日本IBMもCrusoeを搭載したノート・パソコンを開発しているが,出荷時期は2000年末以降になる見込みだ。同社は標準バッテリだけで8時間稼働させることを目指しており,そのためにノート機のハードウエア設計を見直している。「プロセサをCrusoeに乗せ換えただけでは,その良さが生かせないからだ」(池田敏幸大和事業所OEMシステム開発ディレクター)。

 日本IBMはビデオ処理回路やUSBポートの回路を改良し,ノート機全体の消費電力を削減することを検討している。たとえばUSBポートは通常,ポートを利用していない場合でも通電している。未使用時に通電を停止することによって,消費電力を減らすことができる。

 日立製作所はノート・パソコンにとどまらず,携帯型のインターネット専用端末「Portable Internet Appliance(PIA)」にもCrusoeを採用する計画だ。Crusoeシリーズのなかでインターネット専用端末向けとされるプロセサ「TM3200」を採用する。6時間以上の連続稼働が目標。OSには,トランスメタが開発した「Mobile Linux」を採用する。2000年12月の出荷を目指している。

 PIAの本体はA4サイズで,10インチ型液晶ディスプレイを搭載する。本体にキーボードはなく,ペンを使って操作する。ハードディスク装置は内蔵せず,代わりにフラッシュ・メモリーを使う。携帯電話やPHSに接続して通信するためのインタフェースのほか,LAN用のインタフェースを標準で内蔵する。

(中村 正弘)