企業情報ポータル(EIP)を導入する企業が増えている。業務上必要な情報を一つの画面に一括表示できるため,情報を参照する手間を削減したり,情報の見落としをなくせるなど,大きな効果があることが浸透してきたからだ。一方でEIP構築用の製品も急増。ユーザー企業にとって選択の幅が広がっている。ただし登場して間もない製品だけに,機能がまちまちである,ユーザー管理機能が弱いなど,導入する際の注意点は少なくない。

 「インターネット環境やグループウエアを整備したものの,必要な情報をきちんと見る習慣がある社員は,必ずしも多くなかった。当然,重要な業務連絡を知らない社員が出てくる。この状況をなんとか改善したかった」。航空測量大手である国際航業の柘植夏記 戦略情報部リーダーは,1999年10月に稼働させたEIP(企業情報ポータル)システムの狙いをこう語る。「今では必要な情報の見落としが大幅に減ったほか,いちいちクライアント・ソフトを立ち上げなくても必要な情報にアクセスできるなど,予想以上の成果が出ている」(同)。

 マイクロソフトのEIP構築ツール,デジタルダッシュボードを利用したEIPシステム「カゴメディア2000」を,2000年3月から運用しているカゴメも同様だ。「“決裁案件が一画面に集約されて作業が非常に楽になった”,“複数のシステムをいちいち立ち上げる作業が不要”,“最新のニュースがどんどん入ってくるのはありがたい”などユーザーの評価は高い」と,導入を主導した竹内宏和 情報システム部 東京システムグループ課長は語る。

 国際航業やカゴメだけではない。リコー,セイコーエプソン,東芝,神戸製鋼所など,最近になってEIPシステムを構築する企業が急増している。

 ユーザー企業側の関心の盛り上がりに歩調を合わせるかのように,EIP構築ツールも急増中だ(26ページの表1)。昨年10月に,EIP構築ツール「デジタルダッシュボード」を出荷したマイクロソフトは,この5月にWindows2000対応の新版「同2000キット」を出荷。ほぼ同時期にビーエスアイ(BSI,旧・物産システム・インテグレーション,本社東京都中野区)は「Viador E-Portal Suite 6.0」をリリースした。7月にはロータスと日本IBMが,9月には富士通もEIP構築ツールを投入する計画だ。さらに10月にはサイベース,2001年には日本オラクルが製品を発売する。

 これほどの盛り上がりを見せるEIP構築ツールとは,どんな機能を備えているのか。国際航業やカゴメなどが得ているユーザーからの評価は,どんな企業でも簡単に得られるものなのか。以下では製品の機能を中心に,EIP構築ツールの実際を見ていこう。

企業内外に散在する情報を一括表示

 EIPは,簡単に言えば「企業内外のさまざまなシステムに蓄積されたデータや情報を,Webブラウザなどのクライアント・ソフトから一括してアクセス,同一画面に表示するシステム」である。文字通り,企業の内外に散在するさまざまな形式のデータや情報への「玄関(ポータル)」だ。

図1●EIP(企業情報ポータル)システムの機能。利用者の役職や所属部署に応じて,表示内容を変更するためのパーソナライゼーション機能や,必要な情報を検索するための全文検索機能などを備える

 情報への玄関となるシステムを効率良く構築し,運用するためのソフトがEIP構築ツールである。その機能は一般に図1[拡大表示]のようになる。基本となるのが電子メールやグループウエア,全文検索,それにRDB(リレーショナル・データベース)に蓄積されたデータの参照・分析機能。単に情報を表示するだけではなく,アプリケーションを操作する機能を提供するツールもある。

 図2を見ていただきたい。国際航業が運用しているEIPシステムの初期画面である。使用しているクライアント・ソフトはロータス/ノーツだ。国際航業では一つの画面を4分割して電子メールや,会社からの連絡事項を表示する「What’s new」といった,4種類の情報を常に表示するようにしている。「EIPを起動すると,必ずこの画面が表示されるので,連絡事項やその日の予定を見逃すようなことを減らせる」(柘植リーダー)。

(西村 崇)