BTX
新フォーム・ファクタは熱と騒音を考慮

 OSのサポートとは直接関係ないが,今後はパソコンの形状も変わってくる。

 パソコンのケース(ねじ穴の位置やスペース),電源本体/電源コネクタの形,マザーボードの形状はIntelがフォーム・ファクタ仕様として定めている。現在の主流のフォーム・ファクタはATXと呼ばれるもの。ATXに従ってメーカーが各パーツを作ることで,異なるメーカーが作ったものでも組み合わせて使うことができる。

 このATXに代わる仕様としてIntelが新しく策定したのがBTXだ。2003年9月に公開された。BTXとATXは電源コネクタの形状などで互換性はあるが,マザーボード/電源の形状は全く異なる。BTXのマザーボードは基本的にはATX用のパソコン・ケースに格納できない。

 BTXとATXの最大の違いは,マザーボード上のチップ/コネクタのレイアウトである。ATXではCPUがケースの前面に対して右側に置かれ,横方向にMCH,ICHが並ぶ構造になっている。

図8●BTXの実装
従来,CPU,MCH,ICHはパソコンの横方向に配置されていた。これを縦方向に配置し,風の流れを改善する。これはCPUの熱対策とマザーボードの回路設計を楽にするためである。

 これに対してBTXではCPU,MCH,ICHがほぼ一直線に並ぶ(図8[拡大表示])。グラフィックス・カードを挿入するPCI Express×16スロットもほぼこの直線上に置かれる。また,ATXにはなかったマザーボードの下のスペースも規定した。このようなデザインに変更したのは,今後も増加が見込まれるCPU/グラフィックス・チップの発熱に対処するためである。直線的に並べることで風の通りを良くし,熱を逃がしやすくした。

 ファンによる騒音を抑えるために,ファンの数を抑える工夫もある。リファレンス・デザインでファンはCPUの上部に取り付けられた。これ一つでケース内の換気とCPUの冷却ができる。

 Intelによれば「2004年後半からBTXに準拠したパソコンが登場する」という。ただし,電源/ケース/マザーボード/CPUクーラーといったすべてのパーツがBTXに対応するには時間がかかる。ATXとBTXの混在環境は数年間は続きそうだ。

Wireless USB
周辺機器も無線でつなぐ

 2004年2月に米国サンフランシスコで開かれたIntel Developer Forum(IDF)Spring 2004では,新しい無線インタフェースの発表があった。Wireless USBである。Intelのほか,米Agere Systems社,米HP社,Microsoft,NEC,蘭Philips Semiconductors社,韓国Samsung Electronics社の6社が協力し,2004年5月をメドに「spec1.0」と呼ぶ第一弾仕様を作成・公開する予定だという。

 Wireless USBは現行のUSBの有線ケーブルを無線に置き換える無線インタフェース仕様である。無線技術には,広い帯域を用いる近距離向け高速通信技術「UWB(Ultra Wideband)」を使う。ターゲットとする伝送速度は,USB 2.0の最大通信速度である480Mビット/秒である。

 Wireless USBとUSBの違いは,(1)機器の関連付け,(2)データの暗号化,の二つである。両者とも無線ゆえに必要となる機能といえる。

 (1)の関連付けは,機器とそれを使うパソコンを関連付ける処理である。複数のパソコンが近くにある場合,機器の関連付けをしないとどれが自分のデバイスであるか分からなくなってしまう。(2)のデータの暗号化は,機器とやり取りするデータを他のパソコンから読まれないようにする。公開鍵/暗号鍵のペアを機器ごとに持たせることで暗号鍵の交換をする計画である。

(中道 理)