大容量化で一歩先を行く

写真6●マイクロドライブの内部構造
TypeIIのCompactFlashに小さなハードディスクを内蔵している。現行製品の最大容量は1Gバイトである。

 CompactFlashは,多くのフラッシュメモリー・チップを搭載できるため,大容量化でも他の規格を一歩リードしている。2003年2月現在,1Gバイトの製品が存在する。

 より大容量の製品としては,厚みを3.3mmから5mmに増やしたTypeIIのCompactFlashに小型のハードディスクを内蔵したマイクロドライブがある(写真6)。日本IBMが開発した。現在は,日本IBMのハードディスク部門を吸収した米Hitachi Global Strage Technologies社の製品になる。

 マイクロドライブは2003年秋に,4Gバイトと2Gバイトの製品も登場する。大容量化に当たっては,読み書きするためのヘッドを従来のサイズより4割小さくしてヘッドが動く面積を増やした。そして,ディスクのコーティング技術である「Pixie Dust」を利用して記録密度を大幅に向上させた。容量だけでなく,データ転送速度も約5割向上するという。

 ただし,4Gバイトのマイクロドライブは機器側の対応に注意する必要がある。現行機器の多くはメモリーカードのファイル・システムにFAT16を採用している。このため,最大2Gバイトまでしか認識できない。4Gバイトのマイクロドライブを利用するには,機器側がFAT32に対応している必要がある。

メモリーカードを大容量化するさまざまな工夫

図A●メモリーカードの大容量化のための技術
記録容量を増やすには,1チップの容量を増やす方法と,メモリーカードに内蔵するチップの数を増やす方法の二つがある。これらを組み合わせて大容量化する。
 フラッシュメモリーは,電源を切ってもデータが消えない不揮発性メモリーである。データを1ビットごとではなく,まとまった単位で一括消去する。フラッシュメモリーには大きく2種類の構造がある。ランダムなデータアクセスに強いNOR型と大容量化しやすいNAND型だ。NAND型と似た性質をもつAND型もある。過去にはNOR型を使ったメモリーカードもあったが,現在はすべてNAND/AND型を使っている。

 メモリーカードの容量は,(1)1枚のシリコンチップの記録容量を増やす,(2)複数のシリコンチップを内蔵する,という2通りの方法を組み合わせて大容量化する(図A[拡大表示])。(1)を実現するには二通りの方法がある。半導体のプロセスを微細化して記録するセルの数を増やす方法と,1セルに記録できるビット数を増やす方法(多値化という)である。(2)の場合も二通りの方法がある。1パッケージに複数のシリコンチップを縦に積んで(積層して)入れる方法と,メモリーカードに内蔵するパッケージを増やす方法だ。

 フラッシュメモリーは,通常は1セルに1ビット(0か1)を記録する。これに対し,多値では,一つのセルに複数のビットを記録する。1セルに2ビット記録する場合は,同じセル数で容量が2倍になる。

 多値のうち,4値(2ビット)の場合を例にとってみよう(図B[拡大表示])。フラッシュメモリーは,1セルに一つのトランジスタを持っている。トランジスタの中に電荷があるかないかで0か1かを判別する。電荷がある場合は0,電荷がない場合は1になる。それに対して多値の場合は,11,10,01,00という四つの状態を作る。具体的には,電荷がない場合を11,ある場合を3段階に分けてそれぞれ10,01,00を記録する。読み出し時には,電荷量に応じた電圧をかけて四つの状態を判別する。

 (1)の方法は,大容量チップが量産されるようになればコストは下がる。これに対し,(2)の方法はチップの枚数が増えるためコストがかかる。松下の512MバイトのSDメモリーカードは,特殊なパッケージ技術を使い,64Mバイトのシリコンチップを8枚内蔵している(図C[拡大表示])。そのため,大容量化と引き換えに価格は4万円前後と高い。


図B●多値技術の概念
記録する状態を複数設定して,1セル当たりに記録するビット数を増やす。
 
図C●フラッシュメモリーの実装技術
松下電器産業製の512MバイトのSDメモリーカードの例。複数枚のチップを充填剤で固めている。同社の資料を基に作成。

(堀内 かほり)