メモリーカードは,主にデジタルカメラの記録メディアとして普及してきた。今後は携帯電話を中心とする携帯機器用の記録メディアとしての用途も見込まれている。対応する機器が多様になり,大容量化と同時に,より小さい機器に対応するため小型の規格も次々に登場している。問題は規格の多さだ。ユーザーは,機器ごとに異なる規格のメモリーカードを購入することを強いられている。

 メモリーカードは,フラッシュメモリーを使ってデータを記録する,小型のカード形状をしたメディアである(写真1[拡大表示])。主にデジタルカメラの画像を保存するメディアとして広く使われている。ほかには音楽プレーヤや情報携帯端末などにも使われている。ただし,規格が多く,対応したスロットを持つ機器でしか使えないのが難点である(写真1)。

 初期の規格は三つある(図1下[拡大表示])。ATAコントローラを内蔵し機器側からはハードディスクとして認識されるCompactFlash,0.7mmと非常に薄型のSmartMedia,少し遅れて登場した小型のMultiMediaCard(MMC)だ。

 これらの形状に対する考え方はそれぞれ異なっている。CompactFlashは厚みを持たせ大容量化しやすくなっている。一方SmartMediaは,制御用コントローラを内蔵しないシンプルな構造だ。MMCはこれらより小型なのが特徴である。

 初期の三つの規格は,基本的には汎用のメディアである。これらに対し,最近の規格は用途を強く意識して開発されている(図1上[拡大表示])。具体的には,ソニーが中心となって開発したメモリースティック,松下電器産業,東芝,米SanDisk社が共同開発したSDメモリーカード,オリンパス光学工業と富士写真フイルムが策定したxD-Picture Cardの三つの規格がある。これらは,規格ごとに採用するメーカーの陣営がはっきりと分かれているのが特徴だ。

写真1●代表的な各メモリーカードの大きさ
図1●各規格の位置付け
今後主流になるのはメモリースティック(メモリースティックPRO)とSDメモリーカード,xD-Picture Card。それぞれメーカーごとに陣営ができている。CompactFlashは現在も幅広く使われており,MMCは主に欧州で使われている。SmartMediaは今後は縮小していくと考えられる。

著作権保護対応製品を用意

写真2●LED付きメモリースティック
レキサーメディアの製品。データにアクセスしている間はLEDが点滅するようになっている。使用中にスロットから抜いてしまい破損するのを防ぐための工夫。

 三つの規格のうち,メモリースティックとSDメモリーカードはよく似た性格を持っている。音楽を扱ううえで必要な著作権保護機能を搭載している点だ。今後主流になっていくと考えられる両者は,ソニーのメモリースティック対松下のSDメモリーカードという構図になっている。

 メモリースティックは,横長でチューインガムのような形状をしたメモリーカードである。通常のメモリースティックと,同じ形状で著作権保護技術「MagicGate」を搭載したマジックゲートメモリースティック(MGメモリースティック)の2種類がある。今後増えると見られている,著作権保護技術に対応した音楽データや画像データを記録する場合に利用する。店頭での販売価格はMGメモリースティックの方が若干高い。

 外見の特徴は横長である点。手探りでも挿入方向が分かるようにするためだという。サイズは身近によくある大きさが使いやすいと考え,単三電池を目安にした。

 メモリースティックは基本的にはソニー製で,サードパーティはソニーからOEM供給を受けて販売している。ただ米Lexar Media社はソニーからライセンスを受けて独自のメモリースティックを製造している。同社の製品の特徴は,データ破損を防ぐためにLEDを内蔵している点だ(写真2[拡大表示] )。データの転送中にユーザーがメモリーカードをスロットから抜いてしまうと,データが破損してしまうことが多い。しかも,パソコンの画面上では転送が終了したように見えても,実際にはまだデータの転送が終わっていないことがある。Lexar製メモリースティックは,アクセス中はLEDが点滅するため,ユーザーが誤って抜いてしまう事故を防げる。

32Gバイトまで対応可能な新規格

 現行のメモリースティックの問題点は,容量の上限が128Mバイトである点だ。この上限はもともと「開発当時のフラッシュメモリーの最大容量から決めた」(ソニーメモリースティック事業部フォーマット戦略部の岡上拓己フォーマット戦略担当部長)。

 ところが,デジタルカメラの高画素化は同社の予想を超えて進み,必要な記録容量は劇的に増えていった。その結果,他のメモリーカードには128Mバイトを超える製品があるのに,メモリースティックだけが取り残されてしまった。そこで同社は,次世代の大容量メモリースティック規格「メモリースティックPRO」を作った。標準で著作権保護技術のMagicGateを搭載し,32Gバイトまでの容量を規定している。当初は256M/512M/1Gバイトの製品を2003年3月に投入する。

 ただし,従来のメモリースティックのスロットではメモリースティックPROは使えなくなってしまった。従来のメモリースティック対応機器は128Mバイト以上のメモリースティックには対応しないように作られているためだ。従来のメモリースティックに対応したPDAやノートパソコンで,ファームウェアのアップグレードができる機種は,メモリースティックPROに対応できる。また,メモリースティックPROに対応した機器では,従来のメモリースティックも使える。

 メモリースティックPROは,データ転送が高速になっているのも特徴だ。従来はシリアル転送だったのに対し,データ線を増やしてパラレル転送方式に変更した。従来の4倍に当たる20Mバイト/秒の転送速度を実現している。

(堀内 かほり)