キーボードにも広がる光学式

図3●光学式マウスのセンサ。
LED光を机にあて,反射した光をCMOSセンサが机の表面の模様として読み取る

 マウスでは光学式が増えてきた。光学式マウスは,机や紙などの表面を画像として読み取る。そして画像を比較して,どのくらい移動したかを割り出している。

 光学式マウスのメリットはいくつかある。メーカにとっては,部品が小さく,少なくて済む。ユーザにとっては,ボール式マウスのようにボールに付着したゴミを掃除する必要がない。

 通常の光学式マウスは,1秒間に1500回というスピードで机の表面の画像を読み取り,それらを比較することで動きを検出している(図3[拡大表示])。読み取り回数が1秒間に2300回の製品もある。CMOSセンサで16×16ドット程度の画像として取り込む。解像度は400ドット/インチである。

 光学式マウスのLEDの色は赤色が多い。これにも理由がある。「赤色のLED光はCMOSセンサの感度が一番高くなる。青色のLED光を使う製品も出てきているが,動きが悪くなる可能性がある」(アジレント・テクノロジー半導体部品本部モバイルビジネス部マーケットディベロップマネージャの山井正敏氏)という。

 また,光学式マウスは部品が少ないため,ポインティング・デバイス以外の機能を付加できるようになった。例えば,ユーザ認証のために指紋を検知するマウスや,外部記憶装置としてメモリスティックを搭載したマウスがある。

 ちなみに,光学式マウスのように,状態を光学的に読み取る光学式キーボードがある。米VKB社が開発した「virtual keyboard」だ(写真6)。レーザ光で机や紙などにキーボードを投影し,投影されたキーをタッチすればその文字が入力されるというもの。

 virtual keyboardはCMOSセンサを使って指の位置や,押されたキーの位置を検出している。携帯電話に搭載したり,デバイスをPDAにつなげば,あらゆる場所でキーボードを投影して文字入力ができる。2002年秋から,シーメンスがヨーロッパで販売を開始する予定である。

3次元の動きを検出するマウス

写真6●米VKB社の「virtual keyboard」。
レーザ光でキーボードを投影している。CMOSセンサを搭載する

 一般的に,マウスはx軸(横方向)とy軸(縦方向)という2次元で位置を表す。これに加えて,前後(奥行き)の動きを検出できるマウスが開発されている。

 NTTサイバースペース研究所では,光学式3次元入力デバイス「Fleder Mouse(フレダーマウス)」を開発した。CRTのディスプレイが走査線で画面を描画する仕組みを利用した。

 Fleder Mouse本体にはレンズが付いており,それをディスプレイに向けて使う(写真7[拡大表示])。レンズの内側には四つのセンサが入っている。ディスプレイ上には四つのセンサと対応した点が表示される。各点は,センサが監視しているポイントをCRTの走査線がいつ通過したかで割り出される。

 ディスプレイ上に表示される四つの点を結んだ四角形は,マウスをディスプレイに近づけると小さく,遠ざけると大きくなる。傾けた場合は,四角形が歪み台形になる。このようにして,Fleder Mouseは上下左右前後と傾きを検知している。

 マウスをディスプレイに近づけると対象物にズームしたり,建物の中に入るという動作ができる。ディスプレイに近づけて横に動かすと,本のページをめくるというような動作もできる。

 用途としては「ゲームや,博物館・美術館の館内の案内といった用途が考えられる」(メディア通信プロジェクト画像情報処理グループ研究主任の加藤晃市氏)。このマウスはCRTディスプレイの走査線を利用しているため,液晶ディスプレイでは使えない。

写真7●NTTサイバースペース研究所が開発した「Fleder Mouse」。
CRTディスプレイを位置の検出に利用する

 他にも,3次元で操作できるマウスがある。米3DConnexion社が製造/販売する「Magellan(マジェラン)」である(写真8)。Magellanは机に置いて操作する。本体の中央に手で握る円筒状のコントローラがある。コントローラは回転させたりねじったりできる。持ち上げたり押し下げたりすることも可能だ。このコントローラで,画面に映し出された物体をズーム/回転,上下左右に移動させるといった操作ができる。用途としてはCADに限定されている。

 空中で操作できるマウスもある。米Gyration社が開発した「ジャイロマウス」だ(写真9)。プレゼンテーションなどの用途に向く。同社が特許を持つジャイロ・センサを搭載する。内蔵している角速度センサで本体が振られた方向を割り出し,その方向にマウス・ポインタを動かす仕組みになっている。国内ではイノテックが販売している。

写真8●米3DConnexion社の「Magellan」。
国内では日商エレクトロニクスが販売
写真9●米Gyration社が開発した「ジャイロマウス」。
空中で操作できる

詳細に設定できるタッチ・パッド

 ノート型パソコンのポインティング・デバイスには,「トラック・ポイント」や「アキュポイント」と呼ばれるスティック状のものやトラック・ボール,平面のシート状になっているタッチ・パッドが多く採用されている。中でもタッチ・パッドは多機能になってきている。

 IBMが2002年5月から出荷開始した「ThinkPad T30」にはスティック状のトラック・ポイントに加えてタッチ・パッドが搭載されている。このタッチ・パッドは,ユーザが使い方に合わせて速度や感度を設定できる。タッチ・パッドの表面を4分割して,四隅のいずれかを叩くと指定したアプリケーションを起動させることも可能だ。これらは,ウィザードで詳細な設定ができる。トラック・ポイントとタッチ・パッドはどちらをメインで使うかなどを選べるようになっている。

(堀内 かほり)