データフレーム・フォーマット

図5●IEEE802.11のデータフレーム。
イーサネットと比較した。イーサネットはシンプルな構造だが,IEEE802.11はアドレス・フィールドが四つあるなど複雑。送信元/あて先が有線か無線かにより,どのアドレス・フィールドに何を指定するかが異なる
図6●無線LANにおけるアドレス・フィールドの指定方法。
大きく(a)~(d)の四つあり,どの指定方法かはフレーム・コントロール内のフィールドで指定する
図7●フレーム・コントロールのフォーマット。
送信元/あて先が有線か無線か,WEPを利用しているかなどの情報が入っている
図8●802.11aの変調方式。
通信状況に応じてBPSK,QPSK,16-QAM,64-QAMから変調方式を自動的に選択する。接続さえできれば,最低でも6Mバイト/秒で通信できる。図中の*は必須仕様の通信モードで,それ以外はオプション

 では,具体的に無線LANでどのようにデータをやり取りしているのだろうか。

 無線LANで使うデータフレームのフォーマットは図5[拡大表示]の通りである。四つのアドレス・フィールドを用意している。これはイーサネット(有線LAN)と無線LANが混在している環境に対応するためである。

 送信元とあて先が無線LANなのか,イーサネットなのかの組み合わせによって,アドレス・フィールドの使い方は4通りある(図6[拡大表示])。無線と有線が混在するネットワーク環境では,無線上を802.11フレーム,有線上をイーサネット・フレームが流れる。異なるフレーム・フォーマットの変換はアクセスポイントが行う。

 有線と無線の違いを識別するための情報は,802.11のデータフレームの先頭にある「フレーム・コントール」内に示されている。フレーム・コントロールのフォーマットを示したのが図7[拡大表示]だ。図7の「To DS」があて先に関する情報,「From DS」が送信元に関する情報を表す。いずれも「0」なら無線,「1」だと有線だということになる。また,フレーム・コントロールにはWEPを利用しているかどうかを示すフラグも含まれている。

 802.11は,複数の伝送速度を切り替えながら通信できる仕組みになっている。伝送速度は802.11aと802.11bで異なるし,802.11aで通信していても送信先までの距離やノイズの影響などで電波の状況は常に変化する。送信側は電波の状況に合わせて,データフレームを最適な伝送速度で送る。

 802.11では,どの伝送速度でデータが送られてきたのかを受信側が知るための規定もある。具体的には,図5で示したデータフレームを送る直前に,データフレームの伝送速度を書き込んだ「物理層ヘッダー」を送る。この物理層ヘッダーは,必ず最も遅い速度で送ることにしている。このルールにより,受信側は常に最も低速で物理層ヘッダーを待つ。物理層ヘッダーを見れば,続いて送られてくるデータフレームの伝送速度が分かり,その伝送速度でデータフレームを受け取ることができるようになる。

 例えば,802.11aでは6M~54Mビット/秒まで全部で8種類の伝送速度を規定している。物理層ヘッダーは6Mビット/秒で送信し,データは8段階ある伝送速度から適切なものを選択して送る。伝送速度は変調方式によって決まり,802.11aの場合は4種類の変調方式を使い分ける(図8[拡大表示])。一つの変調方式で2種類の伝送速度に対応する。物理層ヘッダーには,どの変調方式でどの伝送速度かが分かる情報が書き込まれている。