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米IPWireless社 最高技術責任者のRoger P.Quayle氏 |
TD-CDMA技術の供給元である米IPWireless社 最高技術責任者 Roger P. Quayle氏に,他方式に比べた優位性や他国でのサービス展開,今後の高速化などについて聞いた。
Q 現在日本で使われている規格,W-CDMA(Wideband CDMA)やCD MA2000に対するメリットは何か。
A W-CDMAやCDMA2000が採用する,上りと下りの周波数帯域を分けて通信するFDD(Frequency Division Duplex,周波数分割複信)方式に対するメリットは,システムの柔軟性と複数の周波数帯に対応するマルチバンド化が容易なこと。TDDは上りと下りの時間(タイムスロット)の割り当て方を変えることで速度を変更できる。用途に応じたさまざまな使い方が可能だ。
また,FDDの端末は上りと下りの信号を分離するためのフィルタが必要だが,TDDであれば不要なるのでマルチバンド化しやすい。世界各国で使える端末にはマルチバンド化が必要だ。
Q 日本以外ではどのようなサービスが提供されているのか。
A 2005年6月現在,試験サービスも含めニュージーランドや英国,チェコ(ドイツのT-Mobile社が提供),南アフリカ共和国など12カ国で商用展開している。最も規模が大きいのはニュージーランドで,Woosh Wirelessという通信事業者がサービスを提供している。サービスを開始してから2年半経過し,現時点での加入者数は1万5000人。伝送速度が最大250k~500kビット/秒のデータ通信のみで,価格はDSLサービスと同程度に設定している。速度は設計次第で変更できる。例えば英UK Broadband社のサービスは最大速度が1Mビット/秒だ。今後は音声通信も提供する。携帯音声端末の試作機は完成している。
Q 現在の伝送速度と,今後の高速化の予定を教えてほしい。
A 2004年時点でセクター・スループット(基地局当たりのシステム容量。通信範囲内にある端末の通信速度の和)は,周波数帯域幅が10MHzの場合,下り速度の平均が約2Mビット/秒*。2006年には干渉キャンセラ技術(Advanced Multi-User Detection:AMUD)と,複数アンテナで送受信する技術(Multiple Input Multiple Output:MIMO)を使って高速化する予定だ。これらを取り入れると,同じ帯域幅で下りの平均速度を8.5Mビット/秒に高速化できる。
Q 組み込み用の通信用チップはどのような製品に搭載するのか。
A 2005年に出荷予定のSoC2は,低消費電力が求められるモバイル機器向け。携帯電話機やSDカード対応の小型カード端末に搭載する。2006年には高速化に対応するSoC3を出荷する予定だ。SoC3は,携帯電話機のほか家電機器に組み込むことを想定している。デジタルカメラや小型ビデオカメラなどに組み込んで,撮影した画像や動画をその場でネットを介してパソコンに送信する用途を考えている。