図●Wireless USBの動作モデル
無線通信のハードウェア,および無線通信の認証と暗号化にかかわるソフトウェアの改変を除けば,現行のUSBと使い勝手はほぼ同じ。
写真●Wireless USBのロゴ
USBの標準化団体USB-IFが相互接続性を認定したWireless USB機器に与える。機器認証の方法など,認定に必要な実装形態の詳細は現在策定中。
 2006年,電源を除いてパソコンがケーブルから解放される。米Intel社や米Microsoft社などが参画する業界団体「Wireless USB Promoter Group」は2005年5月24日,USBの無線版仕様「Wireless USB 1.0(WUSB 1.0)」を公開した。最大データ転送速度は,3mの通信距離でUSB 2.0と同じ480Mビット/秒,10mで110Mビット/秒。今後はWUSB機器の相互接続性を確保する認定作業を進める。2005年内にインタフェース・カードや既存のUSB機器をWUSB対応機器にするアダプタが発売になり,2006年にWUSBチップを実装した製品が登場する見込みだ。

 WUSBは,既存のUSBプロトコルの物理層を無線化した仕様。無線技術には最大7.5GHz幅の広帯域を使って通信するUltra Wideband(UWB)を採用した。UWB仕様には,パルスを使うインパルス型と,無線LANで使われるOF DMの帯域を広げたOFDM型があるが,後者を使う。OFDM型のUWBは業界団体である「WiMedia-MultiBand OF DM Alliance」がWiMedia UWBとして策定した。WiMedia UWBの上に既存のUSBプロトコルを統合したのがWUSBである。WUSB以外にも,TCP/ IPやUniversal Plug and Play(UPnP),IEEE1394がWiMedia UWBを使った無線版仕様を策定中だ。

最初の認証はケーブルで

 WUSBは,現行の有線USBと同じプラグ・アンド・プレイの使いやすさと,安価なインタフェースの実現を前提に設計された([拡大表示])。バスの調停やデータ転送を司るホストがあり,最大127個の周辺機器を接続する形態は有線のUSBと同じ。OSが備えるUSB関連のドライバ・スタックはほぼそのまま流用できる。

 改変が必要なのは,セキュリティにかかわる部分。ユーザーが明示的にケーブルによってホストに接続するUSBと異なり,ホストの電波の到達範囲にあるWUSB機器のうち,許可した機器だけと通信する認証作業が必要になるからだ。到達範囲が10m以下とはいえ,ユーザーが意図しないWUSB機器との接続を拒否する仕組みが欠かせない。

 WUSB仕様で定めているのは,暗号に128ビット長のAES暗号を使うことと,鍵交換のプロトコルまで。具体的に鍵をどう安全に交換するかは定めていない。現在考えられているのは,(1)最初のセットアップ時にUSBケーブルで鍵を交換する,(2)WUSB機器の筐体やシールに記された数字をユーザーがセットアップ時に入力し,機器のIDと比較する,(3)指定した距離にある機器のみを認証する,の3手法。今後はUSBの標準化団体USB Implementers Forum(USB-IF)が標準化と認定作業を進め,認証の具体的な方法を2005年末をメドに決定するという。

(高橋 秀和)