表●実証実験を実施している企業
2004年7月までに11社が申請し許可を受けている。
図●PLC (Power Line Communication )検討の流れ
 電柱や家庭内の電力線を使って通信する高速電力線通信(PLC)の実証実験が始まっている。2M~30MHz帯域を使う電力線通信では漏洩電磁波が問題となり実施できずにいるが,総務省は2004年1月,漏洩電磁波を低減する技術を検証する目的で実証実験を許可した。

 実証実験の許可から半年経ち,電力会社やモデムメーカーが続々と実証実験を申請していることが明らかになった([拡大表示])。2004年3月10日に許可を受けた九州電力を皮切りに,電力会社とモデムメーカーの合弁会社であるラインコム,最高約190Mビット/秒のPLC技術を持つ松下電器産業など2004年7月時点で12社が申請を許可されている。

 電力線通信は,現在10k~450kHz帯を使う低速通信での利用だけが認められている。周波数帯域の拡大については2002年に総務省が研究会を立ち上げ検討したが,「漏洩電磁波が大きすぎるため周波数帯域を拡大するのは困難だが,今後漏洩電磁波を低減する技術開発が期待される」と結論を先送りした。

実用上問題のない漏洩レベルを探る

 高速電力線通信の実施形態には,電柱から家屋に引き込んでいる電力線を使うアクセス系と,引込み線は使わずに宅内配線を利用する宅内系がある。実験形態を見ると,ほとんどが宅内系だ。具体的には,(1)一戸建ての宅内配線を利用して家電のネット化を想定した実験形態,(2)ビルや集合住宅の電気室まで光ファイバを引き,各戸までの電力線で通信路を作るという実験形態がある。

 業界団体のPLC-J(高速電力線通信推進協議会)では,宅内での利用の方が実現可能性が高いと見ている。一般的に電力線通信では,地面に接地している線に電流が流れることで漏洩電磁波が発生しやすくなる。宅内であれば,ほとんどの家屋が200Vに対応する配線になっており接地線を使わない配線ができる。このため漏洩電磁波を低減しやすい。また,ある実験では外壁のシールド効果により10~30dBの低減効果があるというデータが出ている。

 PLC-Jは10月頃に実験データをまとめる予定だ([拡大表示])。「実験データを提出してもらい,その後PLC推進側とPLCによって影響を受ける側それぞれの関係者を集めて技術基準を検討する。ここで他の無線通信に実用上問題がない範囲を考える」(総務省総合通信基盤局電波部電波環境課の前田尚久課長補佐)。

 2002年の研究会では,最適化されていないモデムを使って実験するなど,適切な議論の準備が整っていなかった。早ければ秋に開催される研究会では,低減技術を用いて測定したデータを基に前回より一歩踏み込んだ議論が期待できそうだ。

(堀内 かほり)