本に忠実かデジタル性を生かすか
それぞれの端末で採用する表示材料と表示の原理は次の通り。松下がΣBookで採用したのは,コレステリック液晶である。表示は白と青のモノクロ表示。白の反射率は30%,コントラスト比は4:1と低いが,文字は精細である。
ソニーがLIBRIéで採用したのは米E INK社が開発したマイクロカプセル型電気泳動方式の電子ペーパーである。視認性が良く,白の反射率は35%,コントラスト比は10:1で新聞紙程度の見やすさだ。軽く薄く,表示が紙のように鮮明であるため電子ペーパーと呼ばれるが,このような要件を満たす液晶パネルも電子ペーパーといわれることがある。
形状は大きく異なる。ΣBookは本が持つ特徴をなるべく再現するような設計だ。「中央から見開きにするなど本の雰囲気を大切にした。ボタンも極力少なくした」(松下電器産業 電子書籍事業グループサービスクリエイトチームの佐藤真チームリーダー)。本体は520g(電池含まず)。コンテンツ保存用のメモリーは持たず,SDメモリーカードにデータを保存する。
LIBRIéは「紙で作られた本の延長線上を追うのがいいのかは分からない。検索機能や,本来持っているレイアウトを崩さず漫画のコマを拡大するなど,紙ではできないことをできるようにした」(ソニー e-Bookビジネス推進室の宇喜田義敬統括部長)。電子辞書を標準で搭載し,検索機能と連動させるなど機能は豊富だ。文字入力のためにボタンは多く,ジョグダイヤルも備えている。190g(電池含まず)という軽さは片手で読むことを想定している。
専用端末が吉とでるか
実は両社の製品とも,当初予定より製品化は遅れた。「本来は2003年4月時点で出荷したかった」(松下電器産業の佐藤氏)という。スペックは1年前と同じであるが,早く製品化してユーザーの反応を知り,市場を作りたいという思いがあった。
製品化に当たっては,「ユーザーのニーズを満たせるレベルと判断した」(ソニーの宇喜田氏)というように,性能は一定レベルまで達しているという。だが,両社とも「表示の切り替え速度がまだ遅い」という認識は一致している。
一方,専用端末の投入は市場の状況から時期尚早と見るメーカーもある。「まずはパソコンやPDAなど汎用端末で広く電子書籍を認知してもらいたい」(シャープ)。電子書籍の普及は,著作権者や出版社との連携など複数の要素が大きく影響するが,今回の専用端末の評価も影響しそうだ。