図●クリエイティブ・コモンズの仕組み
デジタル著作物をクリエイティブ・コモンズのサーバーに登録してライセンスを発行してもらう。四つのマークがあり,マークの組み合わせにより11通りのライセンスがある。この組み合わせから一つを選んで,著作物に貼り付けて公開する。
 著作権者が「どのように著作物を使ってもらいたいか」という意思を表明し,その約束に沿って著作物を自由に利用できる──。アメリカで始まったクリエイティブ・コモンズというプロジェクトが日本でも進んでいる。利用上の条件を示すマークを貼り付けることで,コンテンツを自由に利用しやすくするという取り組みである。

 クリエイティブ・コモンズは,ネット上の著作権強化に警鐘を鳴らすスタンフォード大学のLawrence Lessig教授が提唱した。もともと,著作権に反対するカウンター・コピーライト(CC)の運動が元になっている。その後,同じCCの頭文字を持つクリエイティブ・コモンズへと変化した。著作権に基づいてコンテンツの自由な利用を促進するものだ。

 ソフトウェアの世界には,配布や改変が自由なオープンソース・ソフトウェアがある。オープンソース・ソフトウェアはライセンスを基に配布され,自由に利用・配布できることが明記されている。クリエイティブ・コモンズは,ソフトウェア以外のデジタル著作物についても自由に利用しやすくするライセンス。対象となるのは,文書や音楽,画像などだ。つまり,コンテンツの世界にオープンソースの考え方を当てはめるのである。

 著作物を使いたいと思うユーザーにとっては,クリエイティブ・コモンズのライセンスは交渉の手間を省ける便利なシステムだ。ライセンスを構成するマークは四つ([拡大表示])。このマークを組み合わせて,利用できるライセンス形態は11通りある。クリエイティブ・コモンズのサーバーで希望のライセンスを発行してもらえる。

 日本でも,文化庁が著作物の自由な利用を考えた「自由利用のマーク」を作っている。ただしこちらは,プリントアウト,コピー,無料配布の3点だけを許可することを示すためのもの。音楽や動画は対象外だ。

日本版ライセンスが起爆剤になるか

 クリエイティブ・コモンズはライセンスの運用に関して,まだ不明確なところがある。そのまま国際的に適用すると問題が生じるのだ。どの国の法律に基づいているのかが決められていないからである。日本で運用するならば日本の法律に対応させなければならない。

 日本でのプロジェクトは2003年4月に入ってから本格的に始まった。日本では,国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(グローコム)が中心となって日本版のライセンスを作っている。グローコムが手がけるのは,ライセンスを日本語に訳し日本の法律に対応させることだ。現時点ではまだ英語のライセンスで運用されている。

 日本ではクリエイティブ・コモンズが広がっているとはいい難い。だが,評価を下すのはまだ早い。「今は,日本版のライセンスすらできていない状態。完成してからの成果を見てほしい。クリエイティブ・コモンズに限らず,さまざまなライセンスを使って著作者の意図が伝わるようになればいいと思う」と国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教授・主任研究員の土屋大洋氏は話す。日本版ライセンスは2003年11月に完成する予定だ。12月には提唱者であるLessig教授を招いて日本版を正式に認めてもらうという。

(堀内 かほり)