現在,256Mバイトや512MバイトのSDRAMモジュールは,128Mビットチップと256Mビットチップのどちらかを搭載して製造されている。ところが,2000年以前に製造された多くのパソコンでは128Mビットチップで作られたモジュールは利用できるが,256Mビットチップで作られたモジュールは使えないという問題がある。チップセットが256Mビットチップに対応していなかったためだ。

 この問題を解決しようとメルコが開発したのが,2003年9月4日に発表した技術「Virtual Bank Memory」である。256Mビットチップを搭載したメモリー・モジュールを128Mビットチップを搭載したモジュールとして動作させる。これにより,将来128Mビットチップが製造されなくなり,256Mビットチップが主流になっても,古いパソコンのユーザーがメモリーを増設できる手段を残そうというのである。

 メモリー・メーカーは既に128MビットのSDRAMチップの生産を次第に減らしている。逆に256MビットのSDRAチップは今後とも潤沢に作られる模様だ。近い将来,同じ容量でありながら256Mビットチップで作られたモジュールの方が安くなると思われる。

 この技術を搭載した製品の販売時期や価格はまだ決まっていない。「128Mビットチップを搭載したメモリー・モジュールが,同じ容量の256Mビットチップ搭載モジュールより高くなったタイミングを見計らって投入したい。価格は256Mビットチップ搭載製品とそれほど変わらない見込みだ」(メルコ パソコン関連事業部 畔上勝マーケティンググループリーダー)という。

256M品を128M品2枚に見せる

図●Virtual Bank Memoryの仕組み
古いパソコンは行アドレス信号をA0~A11(12本)までしか使わないため,A0~A12(13本)まで利用する256Mビットチップにはうまくアクセスできない。そこで,表/裏両面に128Mチップが搭載されたメモリー・モジュールとして認識させることで,この問題を解決する。

 256Mビットと128MビットのSDRAMチップで作られたモジュールは,CPUがデータをやり取りする際の信号線の使い方が違う。具体的には,128Mビットチップは行アドレス信号を12本利用するが,256Mビットチップの場合は13本利用する。古いパソコンのチップセットは12本までしか対応していないため,256Mビットチップをうまく利用できない。

 そこで,Virtual Bank Memoryでは,古いパソコンに対して,256Mビットチップで構成されたモジュールを128Mビットチップで構成されているように見せる仕組みを用意した([拡大表示])。具体的には,256Mビットチップをアドレス信号線12本で動作させるような回路を用意する。ただ,12本で動作させるとメモリーの容量が半分になってしまうので,128Mビットチップ2枚分に見せかける。

 パソコンが256Mビットチップに対応している場合は変換しない。パソコンが256Mビットチップに対応しているかどうかは,ブート時の信号のやり取りで判断する。

 Virtual Bank Memory技術で救えるのは,米Intel社のチップセット「810」や台湾Silicon Integrated Systems(SiS)社の「SiS630」を搭載するパソコンである。また,「815」は仕様上は256Mビットのチップを認識できるが,810マザーボードの設計をそのまま流用した815マザーボードでは256Mチップは利用できなかった。この問題もVirtual Bank Memoryを使えば解決できる。ただし,「440BX」など810以前のチップセットではVirtual Bank Memoryはうまく動かないという。

(中道 理)