![]() |
表1●年末商戦向けのA4サイズ対応インクジェット・プリンタ。 上位機種と普及機種を中心にまとめた。インク滴のサイズや機能面で,セイコーエプソンとキヤノンが優位に立つ |
画質を評価するため,各メーカの最上位機種を使って,実際に写真(日本規格協会SCIDサンプル「自転車」)を印刷してみた。その結果,画質はどれも高かった。特に多くのインクを使用するセイコーエプソンの「PM-970C」(7色),キヤノンの「PIXUS 950i」(6色),日本ヒューレット・パッカード「deskjet 5551」(6色)は,粒状感はほとんどない。レックスマーク インターナショナルの「Z65」のみ,一部に粒状感が見られた。
色合いを比較すると,PM-970Cの印刷結果からはカラフルな印象を受ける。特に赤が他社の製品に比べて明るく印刷される。これに対し,950iやdeskjet 5551の印刷結果は自然な色合いに仕上がっている。両者は似通っているが,950iの方が緑や黄色などがやや明るめだ。Z65は,黒がやや紺色がかっていた。このように同じ画像を印刷してもその色合いは微妙に異なる。
速度ではキヤノンが優位
はっきりした違いが出るのは速度面だ(図1[拡大表示])。セイコーエプソンとキヤノンが一歩抜きん出ている。特にキヤノンの優位性が目立つ。PM-970Cと950iを使い,同じ画像をそれぞれの最高解像度で印刷すると,950iはPM-970Cの約半分の時間で印刷できた。
PM-970Cは,使うインクの色数を7色から4色に減らすことで印刷速度を上げるという“荒技”が使える。ライトシアン,ライトマゼンタ,ダークイエローの淡色系インク3色のカートリッジを,それぞれシアン,マゼンタ,イエローに取り替えたうえで,印刷時に4色印刷を指定する。解像度とインク滴のサイズは変えずにノズル数が各色倍に増えることになり,速度が上がる。試したところ,7色に比べ印刷時間が1分以上縮まった。これと同じ仕掛けは,deskjet 5551も用意している。
夜間は静かになるプリンタ
機能面でもセイコーエプソンとキヤノンの製品がリードする。セイコーエプソンがすでに実現していたCD-Rメディアへの直接印刷機能が,今年はキヤノンの製品にも搭載された。4辺フチなしができるのもこの2社だ。セイコーエプソンのみ,ロール紙印刷にも対応している。
これに対してキヤノンの製品だけが持つ特徴もある。給紙や印刷時の動作音を弱める「サイレントモード」と,給紙と排紙のそれぞれのトレイをたためる点だ。
サイレントモードは,キヤノンのプリンタ全機種が搭載している。時間を指定した設定もできる。これを利用すれば,夜は自動的にサイレントモードに切り替える,といったことができる。時間を気にしながら手動で設定を変える必要はない。
また,同社のプリンタは給紙や排紙のトレイをたたみ込み,本体に収納できる。使わない時にコンパクトに保管できる。たたんだ状態のトレイは,ほこりを防ぐふたの役割も果たす。
スキャナ内蔵の利点を生かす
2002年秋には,プリンタだけでなくコピーやスキャナの機能も持つ複合機の新製品も各メーカから発売された。今年,特にこの分野に力を入れているのが日本ヒューレット・パッカードだ。
同社の複合機「psc 2150」は,プリンタの最上位機種deskjet 5551と同じ印刷エンジンを採用した(写真1[拡大表示])。「全ラインナップの販売台数の半分近くを占める」(日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括本部 マーケティング プリンタ・グループの野口伸氏)ほどの売り上げを見せているという。
その原動力となっているのが,同製品が持つ複合機ならではのユニークな機能である。プリンタとスキャナの機能をうまく利用して,ディジタル・カメラで撮影した写真の印刷を便利にするものだ。
まず,ディジタル・カメラのメモリ・カードを本体に差し込む。次に「フォトシート」ボタンを押すと,カードに保存されている画像の一覧(同社はフォトシートと呼ぶ)が印刷される(図2[拡大表示])。フォトシートはマークシートを兼ねている。写真印刷をしたい画像や印刷枚数,サイズなどを選択して該当個所を塗りつぶす。最後にそれをスキャナで読み取らせると,選んだ画像が自動的に印刷される。
ディジタル・カメラのメモリ・カードを本体に挿入してパソコンを使わずに印刷できる製品は従来からあった。しかしその場合,プリンタの小さなディスプレイやテンキーを使って操作しなければならない。psc 2150は複合機の特徴を生かして,この部分の操作性を上げた点が大いに評価できる。
|
|