ジャンル:かな漢字変換 作者:NEC,Canna Project 

ライセンス:MIT URL: http://canna.sourceforge.jp/

 Cannaはフリーで配布されている,日本語入力用のかな漢字変換ソフトである。多くのディストリビューションに収録され,事実上のLinux標準かな漢字変換ソフトの座を占めている。クライアント/サーバー方式で動作する。

 日本語を入力するには,かな漢字変換ソフトが必要だ。Linux上で利用できるかな漢字変換ソフトには,このCannaやFreeWnnプロジェクトで開発が続けられているFreeWnnなど無償で配布されているものと,ジャストシステムのATOK Xなど有償で販売されているものがある。

 そうした中で,Cannaは多くのLinuxディストリビューションに搭載されており,事実上のLinux標準かな漢字変換ソフトの座を占めているといえる。NECが開発し,現在は有志で結成されたCannaプロジェクトにより開発が続けられている。

 ユーザーごとに独自のユーザー辞書を用意することも可能である。キー・アサインのカスタマイズもできる。

クライアント/サーバー方式で動作

 Cannaは,主に漢字変換を受け持つサーバーと,日本語入力を受け持つクライアントの2つのソフトで構成する,クライアント/サーバー方式を採用している。

 X Window System上で利用可能な,クライアント/サーバー方式のかな漢字変換ソフトのクライアント機能はXIM(X Input Method)と呼ばれ,Cannaではkinput2というソフトを用いている。

図1●Cannaとkinput2の動作
キーから入力した文字はkinput2を通じてCannaで日本語に変換される。
図2●漢字変換の動作
変換キーが押されるとCannaは辞書から目的の漢字を探し出して変換する。
表1●Cannaのキー操作方法
表2●キー操作設定ファイル
/usr/share/cannaディレクトリに保存されている。

 GUI環境を提供するX Window System,デスクトップ環境を提供するGNOMEやKDE自体には,日本語入力のためのかな漢字変換機能が搭載されていない。そのため,X上で動作するアプリケーションで日本語を入力する際は,橋渡し役のXIMを介して,外部のかな漢字変換サーバーの機能を利用する。例えば,キーボードから入力されたアルファベットは,XIMを通じて漢字変換サーバーに送られる。そこで,アルファベットが平仮名などに変換された後,XIMに渡される。XIMが受け取った結果をアプリケーションに送ることで,日本語が表示される(図1[拡大表示])。

 変換キーが押された場合は,XIMがその旨を変換サーバーに伝える。変換サーバーでは,入力された文字列を辞書を参照して適当な日本語に変換し,XIMに送り返す(図2[拡大表示])。

Cannaを使うための事前準備

 Cannaを使う際は,変換サーバーのCannaのほかに,XIMのkipnut2もインストールする必要がある。また,デスクトップ環境を起動するときに,XIMにkinput2が利用されるように設定する必要があるなど,インストールは少々複雑だ。

 手軽にCannaを使いたいのなら,利用しているディストリビューションに付属するCannaとkinput2をインストールするとよい。例えば,Fedora Coreであれば「Canna」,「Canna-libs」,「kinput2-canna-wnn6」をインストールしておく。yumで入手するのなら,

$ su
# yum install Canna kinput2-canna-wnn6

と入力すればよい。

 次に,Cannaサーバーが自動起動するよう,システム設定をする。Fedora Coreの場合は,メニューから[システム設定]-[サーバ設定]-[サービス]を起動する。ランレベル5の「canna」にチェックして,保存する。これで,再起するとCannaサーバーが自動起動する。

 準備が完了したら,システムを再起動するか,またはCannaサーバーを起動してからXを再起動する。Cannaサーバーを起動するには,Fedora Coreであれば,

$ su
# /etc/init.d/canna start

と入力する。

Cannaで日本語を入力する

 Cannaで日本語を入力するには,シフト・キーとスペース・キーを同時に押せばよい。マイクロソフトのIME(以下,MS-IME)やジャストシステムのATOKなどと同様のローマ字入力方式による,日本語入力ができるようになったはずだ。変換するには,スペース・キーを押す。さらにスペース・キーを押すと,変換候補が別ウーンドウに一覧表示される。そこから所望の単語を選択したら,[Enter]キーを押すと確定する。日本語入力を終了する場合は,再度シフト・キーとスペース・キーを同時に押せばよい。Cannaの主なキー操作については表1にまとめた。

キーをカスタマイズする

 かな漢字変換ソフトによって,操作のキー・アサインが異なるため,例えばMS-IMEやATOKを使っていたユーザーの場合は,Cannaのキー・アサインに違和感を覚えるかもしれない。その場合はキー操作を変更すると良い。Cannaでは,ホーム・ディレクトリの「.canna」ファイルを編集することにより,キー・アサインを自分好みのものに変更できる。また,/usr/share/cannaディレクトリにあらかじめMS-IME風やATOK風といったキー・アサインの設定ファイルが用意されている(表2)。

 キー・アサインを変更する場合は,「.canna」ファイルを目的のキー操作の設定ファイルに差し替えればよい。もし,MS-IME風にしたいならば,

$ cd
$ mv .canna .canna.bak
$ cp /usr/share/canna/wx2+.canna .canna

と入力する。

 設定が完了したら,いったんログアウトするなどしてからX Window Systemを再起動する。次回,ログインするとキー操作がMS-IME風に変わっている。

(ライター 福田 和宏)


(下)に続く