2005年1月にレッドハット日本法人の新社長に藤田裕治氏が就任した。Linuxの基幹システムへの採用をサポートするため,日本法人を4年で100人体制にしたいと語る。オープンな会社を目指すという同氏に,就任の経緯や方針について聞いた。(聞き手はIT Pro編集 高橋 信頼)

――レッドハットの社長に就任した経緯は。

藤田裕治氏
 私は一貫して営業をやってきました。大学を卒業後日本IBMに入社して営業を担当,その後日本オラクル,NTTコミュニケーションズに勤務してきましたが,いずれも営業担当です。

 レッドハットの社長に就任した経緯ですが,ご紹介をいただいて,米Red Hatで面接を受けることになって。ITの会社というのは立派なビルなどでイメージを高めてモノを売る,という傾向がありますが,行ってみたら大学の中にあって。デモルームはどこだと聞いたら「そんなものはない」と。冷蔵庫があって「好きなものを飲んでくれよ」とか。7人くらい面接を受けたのですが,飾らない,真面目な会社で,通常のIT企業とは違う印象を受けました。本社のあるノースカロライナも,全米でも自然に恵まれたところとして有名ですね。田舎とも言いますが(笑)

 Red Hatが私のどこを気に入ったのかはよくわからないんですが(笑),ITの営業が長いので,現場をよく知っていると思ったのかもしれません。またRed Hatがビジネス市場に舵を切っていますが,長年この業界で飯を食っていますので,ビジネス市場に詳しいと思われたようです。

――オープンソースというビジネス・モデルや文化をどう見ていますか。

 まだまだ門外漢で,これから勉強しなければないけないのですが,先ほど申し上げたように,従来のような「ライセンスで縛る」というモデルと180度違う形でビジネスをやっていて,しかも成長しているということが,非常に面白いと思っています。ワールドワイドでも前年比60%近く伸びていて,まだまだ会社自体が小さいということはありますが,これだけ伸びている企業はIT業界でも少ない。

 これまでのプロプライエタリなビジネスというのは,自分たちで閉じていて,責任も自分たちで取らないといけない。しかしオープンソースでは,助け合える雰囲気がある。知恵を出し合っていける,そういう文化なのかなと思っています。

 自分たちが作ったものだけではなくて,いろんな方が作ったものでビジネスをさせていただく。そういう意味では,変な言い方ですが,あまり儲けすぎちゃいけない会社なのかなと思っています(笑)。赤字はいけませんが,自分たちだけが伸びていくというのではなく,オープンソース・ソフトウエアを作った方々と,コミュニティと一緒に伸びていかなければならないと考えています。

――就任にあたっての抱負は。

 今一番大きな流れは,Linuxがミッション・クリティカルな用途に使われるようになっていることだと思います。Linuxで基幹システムを作る。そのための体制を,日本法人も本社も含めて構築していかなければならないと考えています。

 サポートに関しては,人を増やしていきます。本社のオーサライズはまだなんですが,できれば4年以内に日本法人を現在の約3倍,100人体制にしたいと考えています。また日本向けのサポートは今オーストラリアのブリスベンで行っていますが,そことのコミュニケーションを密にしていきます。

 認定技術者のRHCE(Red Hat認定エンジニア)は累計で2600人ほどですが,4年以内に1万人にしたいと,社内に発破をかけています。

 オープンソースの会社ですから,オープンでフラットな組織にしてたいと考えています。そのため,社長室は廃止しました。社長室があると,社員はノックしてお辞儀して入ってくるわけですが,皆と同じ平机で仕事をするようにしたことで,社員がいつでも,気軽に声をかけてくれるようになりました。